肉体 その1
すんません! マジ遅れました! 後、一身上の都合により、今月いっぱいまでお休みをいただきます。申し訳ありません。
黒のクイーン、斉藤美代は殴られ、地面に叩きつけられる。
当然、感じる激痛。しかも足からではなく、頭から思いっきりぶつけたことにより起こる脳への物理的ダメージは尋常ではない。ただでさえ一般人なら即死しかねない頭からの激突が、黒ジャケット、田中伸太の一撃によりさらに加速する。もはやほとんどのスキル所持者でも耐えられない一撃即死の必殺技に変化していた。
普通なら死ぬ。ただ……黒のクイーンはそのほとんどに含まれない。
スキル『斥力』で地面にS極のエネルギーを、後頭部にN極のエネルギーを付与することで、ダメージをきっちりと軽減した。だが、地面にはそれでもしっかりと、ものがものすごい勢いで激突した後が出来上がっていた。
(軽減するつもりなんてなかった……押さえ込むつもりだったのに!)
普通なら、S極のエネルギーとN極のエネルギーを付与されたもの同士はぶつかることなく、むしろ弾き返されるはずだ。なのに私の頭は地面と反発し、跳ね返るどころか、釘を打つトンカチのように、地面に打ち付けられた。
(そんなの、予想以上の力で押し付けられないとありえない……私が田中伸太の最大火力を見誤った……!?)
馬鹿な。そんな馬鹿なことがあるはずない。黒のクイーンはプロモーション戦にて、田中伸太のスキルらしき現象、それによって起こる最大火力を見た。
黒い正方形に支配された状態の彼を除いた最大火力なら、余裕を持って押さえ込めるほどのエネルギーは込めたつもりだった。なのに、これは――――
(田中伸太が1日足らずで成長している?)
黒のクイーンは思案しつつ、ムクリと立ち上がるが、頭を地面から向けて垂直にした瞬間、激しい立ちくらみに襲われ、膝を付く。
(ダメージが……)
ダメージを軽減したとは言え、後頭部を地面が陥没するレベルの威力で打ち付けられたのだ。体へのダメージはさほどなくとも、頭蓋骨を通して与えられる脳へのダメージは深刻。よって立ちくらみが起きたのだ。
視界が何度も180度回転し、猛烈な吐き気に襲われる。
(まずい。このままじゃ追撃を――――)
今でさえ立ちくらみが起きてから数秒が経過している。いまだに追撃が来ていないことの方が奇跡だ。今からでも遅くはない。今すぐにでもスキルを発動し、受けれる体制を整えなければならない。
黒のクイーンは頭を上に上げて……
「…………ほら、立て」
無表情でこちらの顔を覗き込む田中伸太に、恐怖を覚えた。