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山頂 その2

 黒VS黒。その初弾は、お互いに小さな静電気のような音をパチリと響かせるだけに終わった。


 しかし、黒のクイーンと黒ジャケット。この2人の体には、確かにお互いの情報が刻まれていた。


 まず、黒のクイーン、斉藤美代。


(拳を受け止めた手のひらのこの感じ……パワーでは完全に負けてるわね。速度も、ほんの少しではあるけど、田中伸太の方が速い……単純な体力勝負では負けるわね)


 次に黒ジャケット、田中伸太。


(パワーでは勝っている……が、髪の毛を摘んだ反射神経はかなりのものだな……近接戦は大げさに見積もって五分五分と考えていい。問題は黒のクイーンの能力の応用……中遠距離戦をどうやって切り抜けるか……)


 近距離戦はこのままいけばほぼ互角。問題は中遠距離戦だ。ここをお互いにどう切り抜けるか、どうやって有利状況を押し付け続けるか。そこにかかっている。


((この勝負……飛び道具を制した方が勝つ……!))


 お互いに考えていたことは、奇しくも全く同じであった。


「ねぇ、あなた……」


「……あ?」


 ファイティングポーズを崩さないまま、黒のクイーンは田中伸太に話しかける。その姿は一目見ただけで厳戒態勢を取っていることがわかるが、その瞳は厳戒態勢を敷いている雰囲気とは裏腹に、どこかもの優しげな瞳をしていた。


「黒のクイーンと黒ジャケット……この時代でトップ2の実力者である私たちが戦うにおいて、こんなに散らかった小さなオフィスじゃ格好がつかない……そう思わない?」


「まぁ……うん? そうだな。うん」


 黒のクイーンの問いかけに対し、田中伸太は首をかしげつつ、ふわふわした感じで言葉を返す。どうやらあまりピンと来ていないらしい。


「そう! 狭い! 狭すぎるのよ! だから……こうしてあげる!!」


 両腕を下に下げ、何かを掴むような手の動きを取ると、黒のクイーンは間髪入れず、その両腕を頭の上へグイッと引っ張った。


「何……!?」


 瞬間、グゴゴゴと言う地響きとともに、周りの地面が一気に盛り上がった。


(周りの地面が……盛り上がって……!!)


 その時、田中伸太は周りの地面に集中していて気づいていなかったが、実は天井の素材も自分からベリベリと剥がれていっていた。


 まるで接着力が強いテープを剥がす時のように、ミルクの水滴がミルクの海に落とされた時に発生するミルククラウンのように。


 しかもそれはミルククラウン程度のスピードではない。ミルククラウンなど比較にならないほどの圧倒的速度で、オフィスどころか、関所施設そのものが変形を行っていた。


(だけど……()()じゃない! ()()だ! ただ壊れていくんじゃなくて、何か別のものに変わっていく……!)


 しかもそれはゆっくりではない。ものすごい勢いで、高速に変わっていった。


 こちらへの被害は意外とない。精々砂や煙が舞ってくる程度だ。



 そして、ついに……



「待たせたわね」



 先程のオフィスと比べ、圧倒的に広がった視界。床に広がるレンガ状の模様。隅には恐竜の牙に似た装飾があしらってある。



「超巨大なドーム……か」



「そ、私たちが戦うには相応しい場所でしょ?」



「そうだな……()()に相応しいだけで、俺には相応しくないけどな」



「……言ってくれるじゃない」



 

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