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ゴーレムぐらいは

 さっきの突撃により、わかったことは2つ。


 1つ目。あのゴーレムは見た目こそいろいろな物質の塊だが、見た目は正直言って飾りに過ぎない。おそらくだが、ゴーレムを形作る素材の周りにスキルのまくのようなものを張っていたのだろう。


 その膜の効果はおそらく、私のフラッシュナックルを後出しで止めた時と同種の力。物質と物質を反発させる引力。なるほど、黒のクイーンがそこまで余裕な態度を見せるのも納得だ。素材にした物質の硬度など関係ない。自分のスキルを付与エンチャントみたいな感じで分け与えれば、どんなものでも絶対に壊れない鉄壁のゴーレムとなるのだから。


 2つ目。あのゴーレムは人型ではあるものの、ほぼ人型である意味がない。首が180度動き、腕の関節があらぬ方向に曲がっていたのを私は1番近くで目撃している。おそらくは360度、容易に動かせるのだろう。つまり、私の存在に気づきさえすれば、ほぼ100パーセント対処が可能ということ。私ではなく、たとえ彼でも。


(そして、わかったこと……と言えるほどでは無いけど、あの統一された握力……)


 なんとなくわかった。ゴーレムの仕組み、黒のクイーンとゴーレムの関係に。


(私の仮説が正しければ……黒のクイーンは……)


 目で見えている以上に、余裕はない。


 とりあえず、まずはあのゴーレムだ。私と黒のクイーンの間に境界線を引いているゴーレムたちを処理する必要がある。


「腕は……まだ動く」


 ゴーレムに握られ、パンパンに腫れた右腕を左右に振る。動かすたびにピリリと痛むが、後数回はフラッシュナックルを撃つことができるだろう。


(よし、行く――っ)


「かあっ!!」


 先ほどと同じ要領で一気に加速。目にも止まらぬスピードでゴーレムの目の前まで接近した。


(やっぱり! 私の姿は見えてない!)


 先ほどよりも、もっと単純な目の前への接近なのに、ゴーレムには私の姿に気づいたような仕草は無い。いくら黒のクイーンのスキルと言えど、そもそも生物ではない物体にはない胴体視力までは強化できないようだ。


 つまり、私が常に先手を取れる状況。そして今の私には、先ほどまでとは違い、ゴーレムに対しての対策法を用意している。


 その対策法とは……


「これですよ!」


 床へと腕を突っ込み、ゴーレムごと床をひっくり返した。


 自分の立っていた床をひっくり返されたことにより、頭と足の位置が上下逆になり、ひっくり返るゴーレム。通常であれば、スキル、引力の恩恵を受けているゴーレムをひっくり返すことは不可能だ。


 しかし、全てを跳ね返す引力の膜が体中に張られているはずのゴーレムの足裏には、しっかりと地面が付着していた。私はそこに着目したのだ。


 私の腕が握られた時、腕が弾かれなかったのを見るに、黒のクイーンの意思によってオンオフの切り替えぐらいはできるのだろう。だが、足裏は手のひらとは違い、ほぼ常に地面に接触している部分だ。そんな部分のために、足を上げたタイミングだけ膜を張り、床を踏んだタイミングだけ膜を外すなんて面倒臭い行為をするのは無駄な労力。


 ゆえに、ゴーレムの足の裏だけは、常に膜を張らずにいるのではないかと推測したのだが、それは結果的に正解だった。


(そうときまれば、やることは1つ!)


 床をひっくり返したゴーレムが、空中でひっくり返っている間に、オーラによって強化した肉体を躍動。ひっくり返った一体目のゴーレムが地面へと着地するまでの1秒にも満たない時間をフルに使い、最初の1体を除いた5体の床を剥がし、ひっくり返した。


「ふぅ……」


 息を吐いた瞬間、ドスン、ドスンと鈍い音を立てながらゴーレムが落下していく。


「…………」


 黒のクイーンも、まだスマホを手に持ってはいるものの、目線がチラチラとこちらを向いている。こちらの様子が気になっている証拠だ。


 そして何より、落下したゴーレムが引力の膜によって跳ね返ることなく、地面に落下したということは……


(今は膜を張っていないってこと!!)


「オーラナックル!!」


 私の振りかざした拳は、今度こそ体をぐらつかせる程度にとどまることはなく、金属音を立てながら、粉々に崩壊した。



「さぁ、スマホなんか見てないで……日常生活は終わりですよ?」






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