表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
659/783

機動

 斉藤さんと……いや、黒のクイーンと戦う。そう自覚した時、私は体がズシっと重くなるのを感じた。


 黒のクイーンのスキルでもなんでもない。黒のクイーンと戦うと決めたこと。その事実が、精神的な負担となって、我が身にのしかかっているのだ。


 まるで、自分の体重が倍になったかのような、そんな感覚。


 が、黒のクイーンは待ってくれない。


「いくわよ……」


 黒のクイーンは人差し指を上に上げて一言。


()()()()


 その言葉と共に、そこら中に散らばっていたテーブルや椅子、テーブルの上にあった資料や電話を宙に浮かせ、私に向かって射出した。


「ん!」


 が、今更その程度の攻撃で動揺する私ではない。ファイティングポーズをとり、両手にオーラを纏わせ、柔道の要領で飛んでくる物体を受け流していく。


(この程度なら……田中イズナの(ソード)結界(フィールド)の方がよっぽど厄介だった!)


「さすがは元黒のポーン……この程度ならお手の物……私の元部下とは言え、少し誇らしいわ」


「それはっ……ありがとうございます……ねぇ!」


 やがて私はすべての攻撃を受け流し、フラッシュナックルを発動しようと、右拳をギュッと握りしめた。


「なら、これはどうかしら?」


 黒のクイーンはさっきと同じようにテーブルを浮かべ、右手を私と同じく、ギュッと握り締める。すると、浮かんだテーブルはメコメコと嫌な音を立て、手で握り込み、隠せるほどの大きさの金属ボールに変形した。


「行け」


 金属ボールに変形したテーブルは一気に加速。今まで以上の速度で私に向かって飛んできた。


「っ!」


 私はそれに対し、すんでの所、超ギリギリ、自分の体に着弾する寸前に何とか反応し、ほぼ反射的に体を後ろに飛び跳ね回避した。


 さっきまで私がいたところには、音の1つもなく、小さくも底が見えないほど深いクレーターが出来上がっていた。


(なんつう貫通力……もらったらひとたまりもないですね……)


 さらには……


 ドン。


「……二発目」


「……っあ!」


 黒のクイーンが発した「二発目」と言う言葉とともに、ガクリと体が下に落ちる。床に片膝をつく。膝をついた方の足のふくらはぎを見ると、針で貫かれたような服のシワの真ん中から、ジワリジワリと赤い血が滲み出てきていた。


 自分は二発目を貰ってしまったのだ。そう自覚した瞬間に、脳が痛みの信号を発信する。


 痛みによって生まれたわずかな隙。そこを見逃す黒のクイーンではなかった。


「行くわよ」


 黒のクイーンは瞬時に金属ボールを大量に精製。人差し指をこちらに向けると、まるで軍隊のように金属ボールの大軍が向かってきた。


「ぐっ」


 片足を潰された今、私に残された選択肢は体を振り回して回避する他ない。


(オーラを使って!)


 私はオーラを使って、肉体のすべてを限界まで強化。体を大げさに振り回し、遠心力を利用して小さな金属ボールを紙一重で回避していく。


(このボール……体積が小さいせいで見た目以上に回避しづらい!)


 速度は問題ではない。問題なのはボールの小ささだ。


 ビー玉と同じ位の大きさしかない金属ボールは、速度はそれほどでも、その小ささのせいで、消えてなくなったように感じる。視覚で自覚できるようになるのは、目と鼻の先に来てからだ。


(なかなかに工夫をしますね……だけど)


 視認性を下げた代償として、その分威力が不足してしまっている。あるのは貫通力だけ。その証明に、貫かれた足からは血が滴り落ちているが、問題なく駆動する。


(床に金属ボールが落ちてきた跡を見た時は、貰ったらどうなることやらと思っていたけど……)


 ただ、威力が低いとは言え、回避するに越したことはない。が、反撃せずに、このまま防戦一方となるのも良くない。どこかで反撃の一手を打たなければならない。


(よし……)


 私はいくつもの金属ボールの合間を縫って、最初の金属ボールがめり込み、ヒビができた床に手を突っ込んだ。


 そのままオーラを使って身体強化した体で、床を一気にひっくり返した。


 しかし、床をひっくり返したと言っても、ひっくり返したのはほんの1部分だけ。小さめのテレビぐらいのサイズだ。でも、これで充分だった。


「ふんっ!!」


 私はそのままの勢いで、引っ張り出した床を力強くボレーシュート。黒のクイーンへと射出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ