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殺さないようにするのって、意外と難しい

 叩き潰して四肢をもいだ2人の死体をわざと空中から落下させた後、俺単体で水色の髪の女に近づいた。


「舐められたもんだなぁー……たった3人で追ってこようなんて……」


 こういうのは相手と自分の圧倒的実力差をわからせるため、高圧的に物を言うのが1番だ。


「……ッ!! あなたは……!」


 水色の髪の女は虚ろだった目をギラつかせ、何もない空中から本を生み出した。


(ほぉ……)


 本を片手で掴み、ページをパラパラとめくる。片手にもかかわらず、本のページをめくる手はとてもスムーズで、毎日のようにその本を触っていることがわかった。


 そして、ついに目当てのページが見つかったのか、本をめくる手をピタリととめ、口で何かボソボソと呟き、本を持っていない方の手の平を俺に向けた。


(早いな……)


 ここまで長々と話をしてきたが、水色の髪の女のここまでの行動は、時間にして、約3秒の間に行われた出来事だ。


 片手で特定のページをめくり、口で何かを呟くと言う行動自体、一見簡単そうに見えて、実は難しいものだ。



(本は間違いなくスキルによるものだろう……つまり、その本はスキルを発動するのに重要だキーパーツ……)



 なら……



()()()()()に限る〜」



 本を持っている方の腕を、スパンと切り落とした。



「……うぁ?」



(空気を反射することにより、生み出された爆発的な速度による手刀……目視できるはずもない)



「あ……あ……あ……ッひぎゃぁあああああああああ!!!!」



 あまりにも綺麗な断面のためか、血も滴る程度にしか体外に出ず、本人も認識していないようだったが、少し経つとさすがに痛みを感じ出したのか、女の絶叫とともに、断面から噴水のように血が溢れ出てきた。


「んん〜」


 耳に心地よい舞踊曲ワルツに、ナイアガラの滝を思わせる絶景。神秘的なまでの組み合わせに思わずマッサージを受けている時のようなだらしない顔になりそうだったが、ぐっと欲を堪える


(後は処置だな)


 このまま死んでもらうわけにもいかないため、美しい血の噴水。その発生源である腕の断面を手で押さえ、ぐっと力を入れて止血した。


「ひぎゅっ……ぐ……が……」


 無論、俺に医療知識などあるわけがないので、完全に荒治療。完全に止血できたわけでもないし、出血量的にも今すぐ病院に運ばなければ確実に死んでしまうだろう。


(ま、いろいろとゲロってもらうまで生きてさえ貰えれば、それで充分だからいいんだけど……)


「おい。生きてるだろ?」


「あ……が、ぐ……」


「なんだよ。口から血なんか吐き出し……て……」


 命の危機に瀕しているのに一向に口を開こうとしない女、口から出てくる多量の血に、俺は1つの可能性を見出した。


「ッ! こいつ、まさかッ!!」


 顎を掴み、女の口を無理矢理開く。すると、そこにあるはずの舌はなく、血でできた泡が溢れてくるだけだった。


「……自決したか」


 今の一瞬で自分と俺との実力差を察したのか、それとも仲間が酷たらしく殺された絶望によるものか、とにもかくにも、水色の髪をした女は舌を噛み切って自害したのだ。


「……無駄足……か」


 俺はゴミを捨てる感覚で水色の髪の女の死体をそこら辺に放り投げ、周りの警戒のために出さなかった袖女とブラックがいる方向へ向かった。


 

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