お見合い
同時刻、神奈川派閥のとある場所。
「いんやー、マジかー」
高層ビルの屋上に姿を佇ませるその姿は、子供らしい小さなフォルムによって、可愛らしさを覚えるが、それと同時にそれとない荘厳さが感じられる。
その名は白のクイーン。神奈川派閥の玉座に鎮座する唯一にして全能の存在である。
「ノーダメでいける自信があったんだけど……そううまくはいかないかぁ」
が、その腹には何か鋭いもので貫かれたような後が残っており、この周辺にこびりついた血の量が、受けたダメージの大きさを物語っているようだった。
「ま、こんなもんでいいでしょ。あのまま続いたら殺し合いになっちゃってたし」
しかし、今頃ドクドクと血が体外に溢れ出ていいほどの傷なのにも関わらず、その傷口からは一切血が流れることなく、医療関係者が見れば見事だと言葉を漏らしかねない止血による処置が施されていた。
「お見合いとしては上々だったんじゃないかな! 予想以上に強かったし、私としては好印象〜。バレるとまずいから、お腹の傷が治ったら戻りますか!」
白のクイーンは腹の傷とは裏腹に、満足そうな笑顔を浮かべつつ、高層ビルの屋上を後にした。
――――
ズキン!
「っ! ぐ……」
体に走る痛みの中、俺はブラックを肩に乗せ、袖女とともに神奈川派閥の空を飛んでいた。
(ちくしょう……なんだこの痛みは……)
白のクイーンとの戦いから続いている痛み。白のクイーン戦では胸のみの痛みだったのだが、時間経過の所為だろうか、体の節々が、成長痛かと思うほどに痛むようになってきた。
白のクイーン戦でもそうだったが、不意に体に走る痛みと言うのは戦闘において、明らかな支障をもたらしてしまう。もしこの痛みがこれから先も続くようならば、俺は大きなハンデを背負いながら戦うことになるだろう。
「大丈夫ですか……?」
風に髪を靡かせながら、袖女が俺に心配の言葉を投げかける。男としては、ここで頼りがいのある発言をしておきたいところだが、神奈川派閥そのものに追われている今、そんな強がりは言っていられないだろう。ここは正直に話した方がいい。
「実はな……」
体の節々が痛むというのを袖女に話した。
「なるほど……黒のキングと戦ったときのダメージがまだ残っているんでしょうかね? 何か心当たりは?」
「はっきり言って全くない。黒のキングと戦った時のダメージも目が覚めたらなくなっていたし……」
一体どこのタイミングでこうなったのか……
「ともかく、いつもよりお前に頼ることになりそうだ」
「はーい」