観戦
ちょい短め。忙しいので。
「やれたか……!?」
フラッシュナックルによって旅館ごと粉々に破壊したように見えるが、その真相は定かでは無い。個人的には、すぐにでも旅館に近づいて、生死を確認しておきたいところではあるのだが……
と、その時、後方から何者かによる衝撃音が聞こえてきた。
「……ッ!!」
(あそこは……!)
先程の戦争ほどでは無いにしろ、常人の手では決して生み出されることのない衝撃音だった。そんな音を響かせる者など、近くにいる者たちの中では彼しか知らない。
そして何より、衝撃音が聞こえた位置は彼が待っている場所と全く同じ場所だった。
つまり、彼の身に何かあった。
「ブラック!!」
それを理解した私は、すぐにでも彼の安否を確認するため、旅館に行こうとしていた足に停止命令を出し、ブラックに声をかけ、私の体にしがみつかせる。
ブラックがしっかりと私の体にしがみついたことを確認すると、オーラを溜めてふわりと浮遊。完全に浮いた状態で飛びながら衝撃音が聞こえた位置に向かった。
――――
「……これで良かったのですか? ベドネ様」
元は旅館だった瓦礫の中。誰にも見られることのないそこでは、男が1人、スマホを片耳に当て、ベドネと連絡を取っていた。
『うん! よくやってくれたねカメレオン。こんだけ時間を稼いでくれれば十分だ。映像はしっかりと保存できそうだよ』
ベドネはスマホの奥から声を発するが、その声色はとても上機嫌そうで、その上機嫌ぶりは、今にもスマホの画面から暖色系の光が漏れ出しそうなほどだ。
『黒ジャケットがチェス隊の小娘どもをわからせる展開はなかったけど……まさか白のクイーンと当たってくれるとは! 嬉しい誤算だったよ』
「ならなぜ途中で行かせるのですか? 黒ジャケットと白のクイーンの戦いが見たいのなら、最後までやらせるべきでは?」
『もったいないんだよ。ただ単純にもったいない。今の黒ジャケットじゃあ……黒のクイーンはともかく、白のクイーンに勝てるかどうかは怪しいしね。それに……』
「それに?」
『フェアじゃないじゃないか。お互いに』
スマホの画面の向こうにいるベドネは、密かに笑っていた。