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軟体

 俺の肝臓レバーは勢いをそのままに、空気を切り裂いて、確かに白のクイーンの肝臓レバーへと直撃した。


 その証拠に、俺の視界では確かに俺の拳が白のクイーンの体に入っているのが確認できたし、左拳から、確かにものにぶつけた時の衝撃も確認できた。



 ……が、俺には1つ、白のクイーンの体に拳を撃ち込んだ時、その疑問が大きいか小さいかは定かではないが、1つの疑問が生まれた。



(ちゃぷんっ……て……?)



 インパクトした瞬間、指の根本から第一関節にかけて感じた肉の感触。人殺しで飯を食っているため、人の肉を叩く感触は日常茶飯事と言えるレベルで感じている。なので、白のクイーンの肉を叩いた時に感じた違和感も、すぐさま感じ取ることができた。


 どちらかと言うと、肉を叩いた感触と言うより、水の入った水風船を叩いたようなタプタプ感。


(女の分、筋力に差があるからか……? いや、それにしては――――)


「こらこら! 敵の目の前で止まらなーい!」


 いつもとは違う異常感に、白のクイーンの目の前だと言うことを忘れ、ついつい思考を巡らせてしまったのを見逃さず、のほほんとした声からは想像もできないほどの威力のビンタを頬に貰ってしまった。


「――っ!」


 困っているところからの完全な不意打ちだったため、反射も間に合わず、衝撃で後ろに3メートルほど吹っ飛ばされる結果となった。


「痛づっ……て」


(これは……罰だな)


 戦闘中にあるまじき行為をしてしまった罰だと痛みを受け入れつつ、ダメージとしてはそこまでのものではなかったため、俺は体制を立て直しつつ、戦いの余波によって生まれた小石を右手に掴み、手首をスナップさせるようにして投擲した。


「むっ!」


 投げた小石に何かを感じとったような様子を見せた白のクイーンは、その小石をわざとらしいと感じるほど大きな動作で回避した。


(馬鹿が!)


 大きな動作で回避したと言うことは、その分立て直すのに多めの時間を要すると言うことだ。そして、先に説明したが、俺と白のクイーンの体の位置に差は3メートルしかない。


 3メートルなど、反射と闘力操作で肉体のレベルを飛躍的に向上させることができる俺からすれば、ないのとさほど変わりない。


 小石から少し遅れて白のクイーンの目の前まで舞い戻ると、拳を最速で発射させる唯一の手段であるジャブを、顔面めがけて発射した。





 ズキン





「ぐっ……!?」


 不意に感じた胸の痛み。全く予期していなかったそれに体は反応してしまい、一瞬だけ、たった一瞬だけ体が硬直した。


「らっ……キー!!」


 白のクイーンはそのたった一瞬、時間にしてコンマ数秒を利用し、完全にでは無いものの、反撃できる程度には体制を立て直すことに成功。光の速さで発射されるはずだった左のジャブを掴み取った。


「……は!?」


 白のクイーンに左ジャブを掴み取られた瞬間、視点がガクンと下がる。何が起こったと足元を確認すると、さっきまで問題なかったはずの足の膝が曲がり、尻餅をついてしまっていた。


 しかもそれだけではない。落ちた尻を持ち上げようと、下半身に力を入れようとしても、全くと言っていいほど力が入らない。そしてそれは下半身だけにとどまらず、全身に力が入らない状態となっていた。


「なん……これは……」


 継戦して時間が経ち、体のエネルギーが尽きかけて力が入らなくなるのは経験したことがあるが、まだまだエネルギーが有り余っているのに力が入らなくなるのは初体験。感じたことのない感覚に、口から動揺の声が溢れてしまう。


(触られただけでこんなことになるなんて、普通ならありえない。だとするとスキル? でもそれじゃあさっきのレンガの壁の説明がつかない!)


 ただでさえ混乱し始めてきた頭に、さらなる衝撃が襲いかかってくる。


「それっ!」


 なんと、白のクイーンは掴んだ拳をぐるりと回し、俺の体を1回転させ、地面に頭から激突。投げ技に持ち込んできた。


 何が、何が、何が起こっている。頭から滴る血の温かさを感じつつ、頭を混乱させていると、白のクイーンが口角をあからさまに上げながら、いとも簡単に種明かしをしてきた。


「どう? 驚いた? これが合気……合気道ってやつだよ」





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