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フェイントパンチ

 今だけは、なりふり構っていられない。


(……とは言ったものの、まだ情報が足りないな)


 早めに勝負を決めるといっても、まだまだ情報不足。この状態で決めに行くのは英断ではない。ただの愚者になってしまう。


(大丈夫、まだまだ焦らなくていい)


 急いだ方が良いのは間違いないが、だからといって、焦ってもいいわけではない。白のクイーンと接触してから、体感ではまだ2分も経過していない。情報を得るチャンスはたっぷりある。


(けど、最低限情報が集まり次第、すぐに決めに行く!)


「……ちぇ〜。結局、実力行使になっちゃうか〜……」


 早く決めたい。そんな俺の思いを知ってか知らずか、白のクイーンは頭のてっぺんを右手でポリポリと掻き、若干のジト目でこちらを見つめてくる。


(……ち、こっちから行かないと、アクションが起きないか……)


 本当ならば、こういった状況の場合、相手から仕掛けてくる攻撃を躱しつつ、攻撃手段を見て相手のスキル内容がどうなのかを推察したいところなのだが、どうも白のクイーンからは自分から行こうと言う意思が感じられない。


 理由として考えられるのは、そもそも戦うために俺と接触したのではなく、俺がついさっき断ったお願いを聞き入れてもらうために来ていたから、戦う意思はないと言うのと、もう一つ……



(こちらの狙いを察されているか……)



 早く蹴りをつけたい。その狙いを見透かしていて、わざと時間をかけるような真似をしている可能性。


(お願いも作戦の内で、時間をかけるためだと言う可能性も……)


 ……こんな予想を考えていても、埒が開かない。戦闘のことを考えるべきだ。そう自分に言い聞かせ、深読みをやめる。


(とにもかくにも、こちらから踏み込まないことには始まらない)


 そう結論づけた俺は、右足で一歩を踏み込み、音速並みのスピードで接近し、先ほどの不意打ちと同じ右ストレートを撃ち込んで見た。


「っぶない!」


 が、白のクイーンにとって、これぐらいのスピードは問題ではないらしく、口だけなら危なそうにしているものの、かなり余裕を持って回避していた。


(プロモーション戦でも見たが、流石の身のこなし……! なら!)


 右ストレートによって伸びきった右腕を振り戻し、もう一度右で殴りかかる。だが、先ほどと全く同じ右ストレートではない。頭に向かっての小さめのジャブだ。先ほどと比べて、腕の振りが小さくなった分、拳の着弾速度が速くなっている。


「また?」


 拳のスピードが速くなってはいるものの、まだまだ白のクイーンの回避範囲内のスピードらしく、見事にジャブに反応し、回避運動を始めた。


(――――それが俺の狙いだとは知らずになぁ!)


 瞬間、俺は右拳でのジャブをピタリと停止させ、それと同時に左で肝臓レバーに向かって左のブローを発射させた。


 そう。右はもともとフェイントで、当てる気は毛ほどもなかったのだ。


 そして、見事に右のジャブに釣られて回避行動をとってしまった今、白のクイーンに俺の肝臓レバーを回避する手段はない。絶対に、間違いなく、モロに当たる。


 スキルで防御してくる可能性もなくは無い。だが、スキルで守られたら守られたで、情報が取れることは間違いない。



(とにかく……何か……起きろっ!!)



 そのまま、左拳をぶち込んだ。


 



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