日の光
「眩しっ……」
頭上を覆っていた土とコンクリートの混ざり物を、破壊し、ついに日の光が当たる地上へと進出した俺。久しぶりの日の光を体中に浴びたことにより、思わず出た言葉と共に、開いていた目を細めた。
「うわっ……」
「キャウ……」
視界の少ない中で、横にいる袖女とブラックを確認すると、2人も俺と同じく、久しぶりに日の光を浴びたことによって、いくばくかの拒否反応を起こしてしまっているようだった。
(この状態でむやみやたらに移動するのは危険だな……よし)
「袖女、ブラックと一緒に周りを確認しに行ってくれ」
「……はーい」
まずは身の安全を保障するため、袖女をおとりとして、ブラックと一緒に周りのチェックを任せる。
目へのダメージが回復するまで、この場から動くのは得策ではない。チェス隊複数人に対応できる俺ならなおのことだ。ならば、チェス隊メンバー複数人を相手にできないやつをおとりに、身の安全を確保して目の回復に努めるのが得策。
しかし、それだと袖女が捕まる。もしくは殺されてしまう。その対策のためにブラックを同行させたのだ。
袖女単体ではなく、ブラックも一緒に身の回りの確認をさせることで、何かがあった時、袖女かブラックどっちかさえそこから抜け出して、俺に報告してくれれば、逆に奇襲することができるのに加え、もうチェス隊がすぐそこまで来ていると言う情報も得れる。結局のところ、どう転んでもこちらがおいしい。やって損のない作戦なのだ。
「じゃ、行きましょ、ブラック」
「ワン」
そんなこんなで、袖女はブラックを連れてビルの奥へと消えていった。
「さて……目を慣らすとするかな」
日の光に慣れるため、無理にならない程度に目線を上に向け、目を何度も瞬きさせる。そこから少しして、ふと思ってスマホの画面で今の時刻を確認してみると、時刻はもうすぐ夕暮れに差し掛かるところであった。
(……そうか、もうそんな時間か)
思えば、この1日は怒涛の1日だった。プロモーション戦に始まり、エキシビションでの突然の戦闘参加。そこで起きた俺の異常。黒い正方形。さらにはプロモーション戦中に起こった殺人事件。介入してきた大阪派閥によって、殺人事件の犯人に仕立て上げられたあげく、田中伸太の正体が黒ジャケットだとバラされてしまったことで引き起こさせた犯罪者軍団VS神奈川派閥の戦争。
あまりにも長い1日だ。ここまで濃厚な1日は久方ぶりだ。
(チェス隊メンバーも大変だな……プロモーション戦で疲れているところにすぐさま戦争だなんて……)
チェス隊メンバーはプロモーション戦で負傷した者を除けば、それぞれ2回ずつ見たような気がする。昔は1人と遭遇するだけでピンチに陥っていたが、まぁ、今となっては単体で脅威となるのはキング2人と黒のクイーンぐら……
「……あ」
そういえば、いなかったぞ。たった1人だけ、怪我をしていないのに戦争で見なかったやつが。