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巨大監獄

 先ほどまで、サディスティックで、ショッキングで、とても子供に見せていい現場ではなかった戦場。つい数秒前まで尊き人間の命が次々と失われていた場所には、一輪の大輪と見間違うほどの、白き大城が咲き誇っていた。


 外見は真っ白な西洋の城といった感じだろうか。柱の一本一本がシミ一つ、塗り残しの全くない白でコーティングされており、上の屋根にだけ青のコーティングが施されている。どこかの夢の国のお城に似ているが、あれに比べても白色の着色が多く、神奈川本部よりも巨大だ。西洋風姫路城みたいな感じだ。


「おいおい……そんなのあり……?」


 あまりに一瞬の事象に、思わず言おうとも思っていなかった声が口から漏れ出る。この時だけ、私の口と脳は間違いなく直結していた。


 白のクイーンのスキルはもちろんのこと知らない。そもそも存在が都市伝説並に見えなかったからだ。だが、今回の事象で確信した。白のクイーンのスキルは城を建てる能力だ。でなければ今回の現象はありえない。現代技術ではありえない。


 災害でもなく、自分の肉体に力を宿すわけでもなく、下手で簡単に作れるわけでもない。そのどれにも分類しない異質な力。さすがは都市伝説にもなった白のクイーンと言ったところか。


「つまり、あのカスの攻撃を貰ったのは、避けれなかったのではなく、わざと避けなかった……何のために…………なるほど、城を建てる時間を稼ぐためか」


 おそらくは姿を現す前から、城を建てるための何かしらの準備をしていたのだろうが、時間が足りなかったのだ。そのため、何とか時間を稼ぐ必要があった。なので、時間を稼ぎたい白のクイーンからすれば、注目を集めてくれるあのカスクズゴミカスの存在は、邪魔どころか、ありがたかったに違いない。


 今考えてみれば、最初の派手な登場も、城を建てるための計画手順の一手目だったのだ。


「そして、あんなに大きな城を建てた理由は……」


 大きな城を建てた理由。それはおそらく、神奈川兵士たちやチェス隊メンバーに動きやすく、かつ被害を最小限にするためだろう。


 このオフィスに突っ込んでみて初めてわかったのだが、既に民間人の避難は済んでいる。済んではいるものの、街を守る神奈川兵士が街を破壊するわけにはいかない。私が吸収した全力攻撃と言う例外はあるものの、街で戦うと言うシチュエーションになる以上、力のセーブはどうしても逃れることはできない。そこで、白のクイーンが建てたあの城だ。あの城が戦場を覆ってくれるおかげで、一般の神奈川兵士だろうと、チェス隊メンバーだろうと、フルスロットルで戦えるのに加えて、犯罪者軍団側からすれば逃げることができなくなる。



 そう、まるで巨大な監獄のように。



 まさに一石二鳥。そんなシチュエーションを作り出すために、あの城を建てたのだ。


「どうする!? 城の城壁を突き破って突入するか……?」


 白のクイーンが犯罪者軍団を閉じ込める用に作った城だ。その素材が石やレンガ、コンクリート等のチンケなものではないはず。間違いなくもっともっと上位の、彼に奪われたウルトロン並の硬度の素材で作られていてもおかしくない。


「私の今の力で破壊できるか?」


 もし破壊できなければ、せっかく離れたのに、わざわざ自分から戦場に近づいてしまうことになる。城内がどうなっているかは定かではないが、中の作り次第では、すでに犯罪者軍団が鎮圧されているやも知れない。そんな状態で近づいてしまえば、次こそ逃げ場がなくなってしまう。



 捕まってしまえば、彼の世界を変える瞬間を目で見ることができない。



「けど、それでは時間を稼げない……」



 悩みに悩んだ末、私が選んだ結末は……

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