混沌よりも混ぜられたもの その3
(次は〜どうしよっかな〜)
チェス隊メンバーから降り注ぐ雨のような1降り注ぐ物理攻撃を回避しつつ、私は次の手をどうするかについて考えていた。
(正直、このくらいの量の攻撃なら、回避するのはわけないのよね〜。どんな面白いことしようかしら?)
もはやゲーム感覚。どんな面白い手を使って戦闘を楽しもうか、それだけを考えていた。
勝ちたくは無いのかと思うかもしれないが、実際のところ、勝とうとは思っていない。この戦争に私が参戦した目的はただ1つ。彼の願いである時間稼ぎを成すためだ。故に私はあくまで時間稼ぎをする。ダメージを与えつつも、戦闘不能にはさせず、チェス隊メンバーの意識を極力こちら側に寄せる。
ただ、そんな楽勝に見える私にも、一つの懸念点があった。
(私に構っていないそれ以外のチェス隊メンバー……それが問題ね)
私が相手をしていない他のチェス隊メンバーは、私以外の犯罪者の相手をしていて、もちろんのこと私の手に届く範囲にいない。
(私以外の相手をしている理由はおそらく相性……特殊攻撃が主な連中だからでしょうね)
私にはスキルの関係上、物理的な攻撃以外の全ては通用しない。むしろ強化させてしまい、相手にとってデメリットになってしまう。どんなに強い攻撃を持っている兵士であろうと、全てが無に、むしろマイナスになってしまう以上、関わらない方が得策だと考えたのだろう。
そしてこれらを命令したのは、おそらく、いや間違いなく黒のクイーンだ。
このチーム分けのおかげで、犯罪者軍団側の数が明らかに減っている。犯罪者軍団側も弱いわけではないが、それ以上にチェス隊が強いのだ。このままでは最終的に犯罪者軍団側の残りが私だけになるのは目に見えている。
彼はすでに逃げる準備に入っているだろう。犯罪者軍団側が私1人になってしまっては、私自身が逃げ切ることは困難を極める。
(さぁどうす……)
「っと!」
自分に向かってきているチェス隊以外のチェス隊をどうやって食い止めようか、思考を巡らせようとしたその時、チェス隊の1人のパンチが鼻先をかすめた。
(……さすがに、別のことを考えながらの回避はまだ難しいか)
絶え間なく攻撃が降り注いでくるこの戦場では、別のことを考えるのは命取り。つまり、私側を任されているチェス隊メンバーをどうにかしなければ、向こう側で私以外の犯罪者を始末しているチェス隊に手を出せない。
メンバーが欠けたチェス隊なら、他の犯罪者たちでどうにかできると思っていたのだが、どうもそううまくはいかなかったらしい。
(こうなったらしょうがないわね。こっちはちょっと強引にでも片付けて……)
手を握り拳から手刀の形に切り替え、手刀をそれぞれの首元に落下させようと、体を動かした。
――――
一方その頃、田中伸太は……
「……ほら! ついてこい! もうすぐだ!」
「ゴホッゴホッ……わかってますよ!」
袖女の返事を確認した俺は、反射の力を宿した右手を目の前の土に突っ込み、掘り起こす。
「まさか、会議の時はこんな方法で潜入していたなんて……正直、驚きましたよ」
「まぁな……地面の中なんて、思いついてもだれも実行しようとしないだろ?」
2人は今、戦争真っ只中の神奈川本部付近、その真下にいた。