暗躍の大阪派閥 その1
一方その頃、大阪派閥では、神奈川派閥に潜入しているカメレオンの連絡に応じ、ベドネとネーリエンを含めて、3人で話していた。
「全く……本当に良い仕事をしてくれましたね。カメレオン」
『はっ! ベドネ様に褒めていただけるとは、光栄の極みでございます!』
「あははっ、君の特徴的な言い方は変わらないね!」
「……ベドネやめろ。今はカメレオンの報告の時間だろうが」
ベドネはカメレオンのキザな物言いにケラケラと笑い、それに対してネーリエンは、いつものしかめっ面でベドネに注意した。
「あはは……ごめんごめん。で? なんだっけ?」
「……さっきカメレオンが説明しただろ」
「ごめん! 笑いすぎて忘れちゃった! もう一回説明ヨロシク!」
『は、はぁ……』
カメレオンは返事をしながらも、助けを求めるようにネーリエンへと視線を向ける。
「……しょうがない。カメレオン、すまないが、もう一度説明を頼めるか?」
ネーリエンは眉間を片手で抑えつつ、画面の向こうにいるカメレオンに再びの説明を求めた。
『で、では! 改めて、今回の作戦についての過程と結果のご報告をおこないます!』
「おー、よろしく〜」
「……本当にすまん。マジで」
――――
この作戦は今日から2ヶ月ほど前、ベドネ様から急にお電話がかかってきたところから始まりました……
「はい。こちらカメレオン。何かありましたか?」
『おー、カメレオン。そっちはよくやってるかい?』
「はっ、おかげさまで元気でございます」
ベドネ様はいつも通りのおおらかなご様子で、電話越しでもそのおおらかさ、懐の深さが感じ取れるほどでした。
『いきなりで悪いんだけど……最近入ってきた男の兵士を調べて欲しいんだ。できるかな?』
「もちろんです! ベドネ様直々のご命令であれば!」
私はそれから2日間ほどかけ、1番最近入ってきた男の兵士、田中伸太のことを突き止めました。もちろん私はベドネ様にご報告を入れるため、すぐさまご連絡いたしました。
『お! カメレオン。男の兵士の情報が掴めたかい?』
「もちろんですベドネ様! 男の兵士の名は……田中伸太で、スキルは肉体強化、もともとは東京派閥在住の人間だったようです。後は……」
田中伸太に関すること細かな情報を伝え切ると、ベドネ様は満足したようで、いつものおおらかな雰囲気をさらにおおらかにさせ、私にねぎらいの言葉をかけてくれました。
『よくやったねカメレオン。君のような人材……いや獣材と言えばいいのかな? とにかく、君がいてとても助かっているよ。ありがとう』
「至極光栄の極みにございます!」
まさか、大阪派閥の実質的なトップにねぎらいの言葉をいただけるとは思わず、目の前にいるわけでもないのに、何度も何度も頭を下げてしまいました。
『うんうん……あ、あともう1つ、お願いしたいことがあるんだけど……』
「なんなりと!」
もしそのお願いも達成してしまえば、ベドネ様からさらにお褒めの言葉がいただけると思い、私は2つ返事で了承しました。
『ありがとう。じゃあ……』
『神奈川派閥の長官を殺してきてね。よろしく』
内容を聞かずに。