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なぜ正体がばれたのか? その1

 田中伸太と浅間ひよりの正体が発覚する数分前、黒のクイーン、斉藤美代と、黒のルーク、天地凛は、空を飛びながら、最短で神奈川本部を目指していた。


「斉藤様!」


「何かしら? あまり時間がないのだけれど」


「どうしても聞きたい質問があります! 彼が気になるのはわかります。ですが、浅間ひよりとともに犯人に話を聞くことは、そこまで不自然なことでは無いのでは? 嘘かもしれないとは言え、たまたま話を聞いてしまったと言うのは事実ですし……」


「そこはもう疑っていないし、わざと聞いてようがいまいが、興味もないわ。問題なのは、彼女……浅間ひよりといっしょに、犯人に話を聞きに行ったことよ」


 田中伸太1人で本部の地下にある地下牢獄へ行ったのなら、別に問題は無い。なぜなら、たとえ今回の事件が犯人と田中伸太の共犯で行われた事件だったとしても、面会にはもう1人ガイドがいるはず。面会を利用して口裏合わせはできないし、強行策として、ガイドを一時的に気絶でもさせればできそうではあるが、その場合、目が覚めたガイドが証人となり、暴行罪が成立する。どちらにしろ、わざわざ本部に行って不利になるのは田中伸太側だ。


 だが、これが浅間ひより……ある程度権力を持った人物が同行すると、話は変わってくる。


 もしかしたらの可能性ではあるが、浅間ひよりが田中伸太側だった場合、その発言力を使って「私が見張っておくので、あなたは下がっていて下さい」なんてセリフをガイドに言おうものなら、田中伸太側が自由に話せる密室空間が簡単に出来上がってしまう。


 もともと、田中伸太の側にはいつも浅間ひよりがいた。まさか、まさかとは思うが――――



(あの浅間が……長官に関する情報を流した裏切り者……?)



 浅間ひよりは長官の無理な命令のせいで、一時期任務に出ることができなかった。個人的には、殺人の動機としては少し弱い気はするものの、人がどう思うかなんて人それぞれ。十分、殺人の動機になるだろう。



 だとしたら……



「急がないと…… 2人きりの場を作られる前に……!」



 一方、黒のルーク、天地凛はと言うと……



(キャー!! 2人きりにさせないってちょっと……! キャアー!!)



 恋愛脳を爆発させていた。









 ――――









 場所は移り変わり、神奈川本部。


「そう。そこは――――お前! 解析遅れてるぞ! もっとスピードを上げて!」


 そこでは、神奈川派閥の解析班による犯人のスマホの解析が行われていた。


「何重にもロックが仕掛けられている……すぐに取り掛かって!」


 解析班のリーダーらしき女が、パソコンとにらめっこしている他の班員たちに檄を飛ばす。


 科学力が発達した神奈川派閥では、他派閥では何日間もかかってしまうような難しいロックの解析でも、ものの数時間で解いてしまう。これも今まで歩んできた神奈川派閥の道のりの中で、積み上げられてきた経験値の賜物だろう。


 が――――


「ずいぶん古いタイプのセキュリティ……まるで、自分から解いてくださいと言っているような……」


 解析班の1人が、ぼそりとそんな言葉を溢す。他の班員も同じことを思っていたのか、溢した言葉の主に視線を向けたり、耳をピクリと動かしたり、隅に置いていたコーヒーカップを落としたりと、行動は違えど、何かしらの反応をとっていた。


 犯人の持つ長官の情報が入っていたスマホは、なんと1世代前の古いものだったのだ。


 こういった大事なものが入っている電子機器は、普通最新機種に入れたり、最新機種でなくとも、セキュリティーアプリを入れたり、最新バージョンにアップグレードしたりと、何かしらの対策を施しているのが普通だ。元に、この解析班が発足されてから送られてきた解析対象は、そのほとんどに何かしらの難しいセキュリティやら何やらがついていた。


 なのに、今回は何もついていない。本当に何も。むしろ少し昔の古いセキュリティ。突破するのに数分とかからない。


 現に、もうほとんどのセキュリティは解かれ、後はパソコンの画面に内部にあるデータを表示するのみとなった。


 そして、ついに画面に内部情報が読み込まれ、それが形となって目に見えるように写し出される。


「さぁ、これで――――」


 そこには、黒いジャケットをかぶり、化け物と戦う田中伸太、そして……



 田中伸太に守られ、戦いを眺めている浅間ひより――――私たち神奈川兵士が尊敬すべき、チェス隊黒のポーンが映し出されていた。





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