3人戦闘 大将
袖女に向かって放たれた大剣の一撃。それは袖女に当たることはなく、2人の間に割り込んだ俺によって、いとも簡単に受け止められた。
「っ!」
榎木田純子は俺に攻撃を受け止められたのを視認すると、すぐさま大剣をバイクに戻し、目にも止まらぬ速度で乗り込んで距離を取る。
「……きやがったな。田中伸太」
「名前を覚えてくれているのか、光栄だな」
「黒のキングさまの戦いを私も観てたんだ。あれを見て、お前の名前を忘れない奴はいないだろうよ」
「じゃあ分かってるよな? 俺とお前、まともに戦ってどちらが勝つか」
こういった自信過剰そうなタイプは、少し挑発すると乗って無茶苦茶な攻めをしてきてくれる時があるため、俺はあえて小馬鹿にするような言葉を投げかけた。
「ああ……そうだな」
(……チッ、意外と冷静なタイプか)
がっくりと肩を落とす。白のビショップを落とせば、かなりの戦力ダウンを見込めたからだ。
「じゃ、そこを通してくれないか」
「それはできネェ」
「……あ?」
榎木田純子は俺のお願いを拒否すると、バイクから降りて、すぐさまバイクを変形。両手で持ってやっと持ち上げられるほどの大きさのハンマーに作り替える。
「お前らに殺された……うちの舎弟どもの敵討ちをしなくちゃならないんでナァ」
その言葉を聞いた俺は、少し浅めのため息をつき、右手を前に出して、手のひらを天に向けると、親指以外の指4本を前後に動かした。
「もう、どうでもいいから来い。一瞬で殺してやる」
あれだ。榎木田純子は自分の仲間を大事にする相手にしていて、めんどくさいタイプだ。自分では叶わないことをわかってるけど……! みたいなやつ。
端から見れば、素晴らしい仲間意識だが、実際に相手にすると面倒臭い。こういうやつはササっと殺すに限る。魚をさばくようにスピーディーに、確実に潰さなくては。
「じゃあ……そうさせてもらうゼッ!!」
言葉を吐いた後、榎木田純子は膝を曲げ、走るというより跳躍する形でこちらに向かってきた。
(ふーん……)
常人から見れば目にも止まらぬ速度。ハンマーでの一撃もあの大きさから見て、無視できない攻撃力を有しているだろう。
ただ、そのハンマーの重さのせいで、肝心のスピードが削がれている。先程の大剣攻撃よりも遅いのだ。
先程の大剣攻撃も俺からすればかなり遅い。それがさらに遅くなったのだ。もはや止まって見える。
「ふっ……」
が、そんなことは榎木田純子も想定内だったらしく、ハンマーの射程圏内に入る直前で体を左に倒しハンマーを振り抜く。微妙だが、ハンマーでインパクトを加えるポイントをずらしたナイスな攻撃だ。
「温い」
俺はインパクトを加えるポイントをずらした攻撃にすぐさま対応。ハンマーの着弾地点に手のひらを合わせ、反射を発動し、威力をそっくりそのまま返す。
結果、ハンマーはボロボロに砕け散った。
「くっ……そ!」
しかし、それだけでは終わらないのが白のビショップ。粉々に砕け散ったハンマーの破片が一人でに動き出し、またもや変形する。
変形した先は2本の剣。先程の大剣やハンマーとは違い、小柄で軽そうな片手剣だ。一撃の威力で決め切るのが不可能なので、次は手付かずで攻めようと言う算段なのだろう。
「ただそれは……そこまでお前が生きていればの話だ」
俺は反射と闘力操作の重ねがけで、文字通り、目にも留まらの速さで榎木田純子の背後へ移動。頭を両手でがっしりと掴み……
「あばよ」
反射を使って、頭を木っ端微塵に破壊した。