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3人戦闘 先鋒

 普通の人物がしゃべったなら、本当かもしれないけど、十中八九嘘だろうなと思う言葉だっただろう。


 しかし、自信満々にベラベラ喋りだすあの感じ、そして喋るのを止める舎弟らしき人物の必死さ。そして……


「あっ……いや、あれは、その……」


 急にしおらしくなった榎木田純子の態度。あれはそう、親に隠していたことがバレた子供の態度だ。


(わかりやすすぎる……)


 心の中で呆れ返る。しかし、今はそのわかりやすさがとてもありがたい。


 つまり、今の状況をまとめると、神奈川本部の人間は全員が避難しており、兵士たちが全力を出せる状況にある。チェス隊メンバーももちろん全員揃っているが、避難した重役たちを護衛するため、一部のチェス隊メンバーは神奈川本部の包囲網から離脱している。


 そして重役たちからすれば、できるだけ強いチェス隊メンバーに護衛して欲しいはず。


(つまり……チェス隊の上位勢は俺たちを囲い込む包囲網に入っていない!)


 思いの他実りのある質問だった。チェス隊の上位陣。特にクイーンがいないなら、まだやりようはある。


(最も、クイーンがいたとしても、逃げれる気しかしないけどな……)


「……ちぇ、ちょっとしゃべっちまった。が、まぁ関係ねぇか……」


 俺に余裕ができたのを感じとったのか、榎木田純子はつまらなそうな顔をすると、兵士たちに聞こえるよう、大きな声でゴーサインを出した。


「ここで捕まえちまえばいいだけの話だもんなぁ!! 野郎ども!! やっちまえ!!」


「オオオオー!!!!」


「野郎じゃないけどな!!」


 白のビショップ、榎木田純子のゴーサインを皮切りに、俺たちの周りを囲っていた神奈川兵士たちが一斉に飛びかかってきた。


「袖女。元仲間だがやれるか?」


「有象無象にはそこまで思い入れはありませんよ」


「そうかなら安心だ……行け、ブラック」


「ワン!」


 先陣を切ったのは我が愛犬ブラック。尻尾をやいばに変え、先頭を走る兵士の首元を慣れた手つきで切り裂いた。


「なっ……」


 首元を切り裂かれた兵士は声を上げる間もなく、ホースの口元を手で押さえた時のような勢いで血が噴射し、事切れた。


「なんだあの犬!?」


「尻尾が刃物になって……!!」


 普通、スキルは人間以外には発現しない。ブラックを見たことがない兵士が驚くことは当然だった。


「グルルル……! ガウ!」


 が、兵士たちの驚きをわざわざ待ってやる必要性は無い。ブラックもそのことをわかっているのか、足の筋肉を使って一気に跳躍。小柄な体を生かして縦横無尽に飛びまわり、360度全方位の敵の急所を切り裂きまくり、一撃で命を奪っていく。


 明らかに神奈川派閥での犯罪者狩りで蓄えた経験値が生きている。少し前までは才能はあったものの、経験値が足りなかった。不足していた経験値を、神奈川派閥で一気にもぎ取ることができたのだ。


(これなら大事な役目も十分に任せられる……ブラックも1戦力として数えられるな)


 俺が考えている合間にも、ブラックは群がってくる兵士たちをどんどんと倒していく。


 だが、ブラックは小柄な分、力がない。スピードによる不意打ちを防がれた時にゴリ押しする力が足りないのだ。


 それを証明するかのように、ある程度レベルの高い兵士には、うまいこと手を使ったりして防がれたりしていた。


「おい」


「わーってますよ」


 ある程度レベルの高い兵士には防がれたとは言え、あらかた数は減った。先鋒としては十分。


 中堅通り越して、次は副将の出番だ。

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