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 向井神木の口から放された舌。それは槍状に変形し、ガイドの心臓をいともたやすく打ち抜いた。


「んべぇ〜」


 槍状に伸びた舌は柔らかさを取り戻し、湿ったものに触れる音とともに、グニャリと鞭のようにしなり、向井神木の口の中にしまい込まれた。


「んぐ……これで遠慮なくしゃべれますねぇ!」


「……狂ってますね」


「そら狂ってますよ、狂ってなきゃ初対面の人殺してへんわい!」


 関西弁なのか敬語なのかよくわからん口調で向井神木は話し、それに対して袖女は狂っていると話すが、俺はいたって普通のことだと感じていた。


(ま、そりゃ殺すよなぁ……)


 相手からすれば、ガイドの生死などぶっちゃけどうでもいい。そして俺の名前を知っていることを考えるに、俺の正体を知っているもしくはそれに近い何かを持っている。


 当然だがそれを他者に聞かせるわけにはいかない。よって、こちらの手を汚すことなく他者を排除することに成功したのはむしろ嬉しく感じる。


(……やっぱ俺も狂ってるな)


 対面している向井神木と同じく、自分も人が死んだ程度では動揺しない。狂った人間なのだと再確認しつつ、他者がいなくなったこの場を最大限に活用するため、袖女よりも前に出て、向井神木に向き合った。


「おお、田中伸太はんご本人から、ええやないですか、いいですか?」


(……ああ? なんだその言葉遣い)


 少し変な言葉遣いに違和感を覚えつつも、俺は感じた違和感を顔に出さず、俺は疑問を言葉に乗せて出した。


「お前はどこの出だ? 見たところ神奈川派閥の出じゃないようだが」


 まずはこの男の出身地について聞かなければならない。


 神奈川派閥にいると俺の正体を知ることはほぼ100パーセント不可能。逆に俺の正体を知っているのなら、東京派閥か大阪派閥の可能性が高い。


 無論、これで本当のことを話すとは思っていない。これからの質問に向けての布石のようなものだ。


「何の変哲もありません。東京派閥の出身ですわ」


「言葉遣いに関西弁が混じっているようだが?」


「片方の親が大阪派閥出身やったんです。それで言葉遣いがうつったんですよぅ?」


(……不可解だな)


 東京派閥は神奈川派閥と同盟を結んでいる。こいつの言うことが本当に正しくて、東京派閥出身なのであれば、なおさら神奈川派閥の重役を殺す理由は無い。なのになぜ殺したのか、個人的な恨みか、それとも根本的に嘘をついているのか……


(探りを入れてみるか……)


「……そうか、じゃあ長官を殺した理由は?」


「面白そうだったからですよ。喫茶店でコーヒーを飲んでいたら、ボディーガードを複数人連れた女性が入ってきて……何者なんだってなるやないですか。やからサクッと一発で……ね?」


(意外に即答だな)


「つまり、快楽で殺したと?」


「ええ、まぁ」


「なるほど……?」


 向井神木の返答は明らかに嘘だ。向井神木から入手したスマホのデータには、明らかに長官を狙った情報が入っていた。


 なのにこいつは、突発的に面白そうなのを見つけたから殺したと言った。明らかに矛盾している。


(ま、嘘をつくことは想定の範囲内だ)


 今は情報を見せる手段が無いため、ここは押し黙るしかないが、この話は袖女が聞いている。後々こいつを追い詰める材料になるはずだ。



「じゃあ、次に――――」



 お前の持つスキルは何だ。そう聞こうとしたその時。



「ちょっと待った!!」



 突然、向井神木が待ったをかけた。


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