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サボり。田中伸太

 袖女が黒のクイーンに連れられてすぐ、俺は近くにいた兵士に話しかけて、自分はどうすればいいか聞いていた。


「そうですね……正直、ここは我々のみで事足りているので、我々とは別で、1時間ほど周囲の警戒を頼めますか? よからぬことを企んでいる輩もいないとは限らないので」


「了解しました。では、周囲を警戒に当たってきます」


 俺はそれだけを言い残し、反射を使って空へと飛びたった。









 ――――









「ふーっ、この辺りかな……」


 俺はそこから数分使い、喫茶店から見えないビルの死角に移動することに成功した。


 なぜそんなところに着地したのか。それは自分の体のチェックをするためだ。


 黒い正方形が俺の体に干渉したことは確かである。それによる身体にもたらされた影響を少しでも早くチェックしておきたかったのだ。


 本当ならば、目が覚めてすぐのタイミングでチェックしておきたかったのだが、袖女とブラックの出迎えに加えて、長官の死と立て続けにいろんなことが起こったため、チェックするための時間が取れなかったのだ。


「ブラック、お前は周りを見ていてくれ。誰かが近づいてきたら吠えて伝えてくれると助かる」


「ワン!」


 ブラックは「任せて!」と言いたげに鳴き声を上げた後、周りの警戒のためにトテトテと俺の下から離れていった。


「頼もしいボディガードだ」


 頼もしいボディーガードに守られつつ、俺はその場に座り込み、体をチェックしていく。


 体に目に見える変化はないか、スキルはいつも通り使用できるか、目や耳、鼻や舌に異常が起きていないかどうか、時間をしっかりと使い、丁寧に丁寧にチェックしていく。


 チェックを始めてから20分ほど経っただろうか。俺は体の全てをチェックし終え、異常がないことを確認すると、ムクリと立ち上がって、上半身を反らし、背骨をバキバキと鳴らしていく。


「ふーっ……結局、異常はなかったな……いや」


 まだやることが残っていた。そう思い出した俺は、右手のひらを上に向け、「黒い正方形よ。出てこい、出てこい」と念じた。


 だが、その願いは届くことはなく、何度念じても黒い正方形が現れることはなかった。


「意識的に呼び出すことはまだできない……か」


 目が覚めた時、俺と袖女は、黒い正方形はもうしばらく使わない方が良いと話していた。が、俺はそれと同時に、黒い正方形に利用価値を感じていた。


 黒のキング戦の時に感じたとてつもないパワー。スキルをものともしない反応速度。一瞬だけ使うことのできた冷気の能力。


 もしあれを意識的に操り、自分の力とできれば……


(もうあの幼なじみなんて目じゃない……天下無敵のパワーを俺のものに……)


 と、思っていたのだが、それはもう少し先の話のようだ。


「……うし、おーい! もういいぞー」


「ワンワン!」


 既に警備に飽きていたのか、ブラックが待ってましたと言わんばかりに早足で戻ってきて、こちらをじっと見つめてくる。どうやらご褒美が欲しいらしい。


「……よーしよし。よくやった」


「ウウ〜」


 俺に頭を撫でられ、ブラックはぶんぶんと尻尾を振る。可愛いやつめ。


 さて、もうやることは無いのだが……兵士と約束した1時間まではあと40分ほどある。戻るのは論外として、今やるべきことは……


「……ラーメンでも食いに行くか」


「ワン!」



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