現場へと
浅間ひよりに報告が届く数十分前……
「ここで合ってるのね?」
「はい! 間違いありません!」
担いでいる女性兵士に案内してもらい、ついに射撃現場である喫茶店へ到着した。
喫茶店の外装は今の時代では珍しく、木製で作られており、所々に付着しているツタがおしゃれさを醸し出している隠れ家のような店だ。
そんな隠れ家のような喫茶店の周りには、牛神奈川兵士が何人か枠を作るように居座っており、他の客が入ることを禁じていた。
(周りの状況から見て、ここで間違いなさそうね……)
「凛! 降りるわよ」
「ハッ」
私の言葉を皮切りに、2人揃って空中から地面に着地すると、柵のように、喫茶店の周りを囲っていた兵士全員が敬礼し、代表であろう1人が私の前に近づいてきた。
「お疲れ様です。黒のクイーン」
「挨拶はいいわ。すぐに中に案内して」
「ハッ……では、こちらに」
私と凛は代表の1人に連れられ、喫茶店の中に入った。
するとそこには……
「ッ!! なんてこと……!!」
はっきり言って、これ以上イレギュラーなことは起こってほしくなかった。信じたくなかったのだが……
「……これは、ここにいる誰か以外には知らせているの?」
「いえ、誰も……」
「なら、今すぐにチェス隊メンバー全員に伝えて。間違っても、それ以外の人間には伝えないように」
喫茶店の店内には、胸の中心に穴の空け、そこから多量の血を流した長官の死体が転がっていた。
――――
長官の死に愕然となりつつも、私は黒のクイーンとして行動を進めていた。
「あなた。大丈夫?」
凛に命令し、長官の死体のチェックをさせている最中、私は先ほどから地べたに座り込み、肩を震わせている女性兵士に話しかけた。
「わ、私がいた時は……まだ息があったんです。確かに……生きておられたんです。なのに、なのに……うぶっ」
「あなたのせいではないわ……誰か、彼女をトイレへ」
ショックのあまり、えづき始めた女性兵士をトイレへ向かわせたのと入れ違いになるように、死体を調べていた凛がこちらに近づいてきた。
「死体の確認が終わりました。報告を」
「お願い」
「ハッ……検査型魚雷で調べてみたところ、死体にはまだ熱が残っていたので、死亡時刻はおそらく5分ほど前だと思われます。原因は胸への銃撃で間違いないでしょう。その証拠に、死体の内部から銃弾が確認できました」
「そう……つまり、犯人がいると言うことね?」
「はい。そしてその犯人なのですが……もうすでに確保されており、奥のキッチンにて捕縛中とのことです」
(捕まった……?)
「犯人は逃げなかったの?」
「マスターに話を聞いてみたところ、犯人は客に紛れて侵入し、長官と連れの兵士たちが話し込んでいるところに銃撃を行ったようです。その後は兵士たちにあっさりと確保されたらしく……」
「かなり突発的な行動ね……まるで捕まりに行っているみたい」
どちらにしろ、その犯人にも話を聞いてみないと始まらないだろう。
「犯人に話を聞きに行くわ。凛。念のため、あなたもついて来なさい」