プロモーション戦終了後 その5
投稿スピードを取り戻してきた。
長官お気に入りの女性兵士からの長官が撃たれた報告。それは凛の魚雷による追跡を待たず、気づいた時には女性兵士を担ぎ、長官の元へ向かうには十分すぎる影響力を持っていた。
「場所は?」
「ステージを出たところからしばらく前に走って、突き当たりを右に曲がったところにある喫茶店です!」
(走っていては時間がかかるわね……!)
民間人がいる前であまり目立った行動はしたくないのだが、今は長官が撃たれてしまったと言う未曾有の事態だ。致し方があるまい。
「凛! ついて来なさい!」
「ハッ!」
私は凛に一声かけると、廊下の窓から外に飛び出し、スキルを利用して空中を浮遊する。念のため、チラリと後ろをチェックすると、凛も飛行型魚雷に飛び乗り、なんなく私についてきていた。
「このまま一気に行くわよ!」
私と凛は走っている時と比べて、段違いのスピードで空を飛んでいった。
――――
そこから時は少し経ち、1時間後。
「ん……ふぁあぁぁ……」
俺、田中伸太は眠りから目覚めた。体を大きなベッドから上半身だけ起こし、あくびをした後、体を大きくのけぞらして背骨をポキポキと鳴らす。あまりにも良すぎる目覚めだ。
(いつもより寝起きがいい……)
その原因はほぼ間違いなく、自分の思うように、好きなように眠れたことだろう。目覚まし時計もない。起こす人もいない。そうやって自分から目覚めたのだ。
よく考えてみれば、自分から起きておいて寝起きもクソもない。起きて当然だ。なぜ気づかなかったんだ。
(さて、ここは……?)
ぐるりと周囲を見渡してみるが、これといって既視感のあるものはない。天井も知らない。
となると、黒のキングとの試合が終わった後、何者かにここまで誘導されたことになるが……神奈川派閥側に回収されたのなら、100パーセント間違いなく研究室っぽいところに置かれているはずだ。
(くそっ……こういう肝心なところだけは見せてくれなかったんだよな……)
暗闇の中で見た映像は断片的な黒のキングとの戦闘シーンしかなかったため、戦った後の自分の体がどうなったかまではわからないのだ。
なぜなら、神奈川派閥からすれば俺は彗星の如く現れた黒のキングに近づく強さを持つ存在であり、男。
神奈川派閥にとっては、それなりに強いぐらいの男でもとんでもないほどの存在価値があるのに、黒のキングとまともに張り合える位の強さを持った男が急に現れたのだ。俺の体のことについて調べない理由はない。
だが、見た感じここは研究室ではなく、何らかの宿泊施設のように思える。
(しかも、高そうなベッドに高そうなカーペット……洋風で統一された家具の数々……こりゃ相当お高いぞ……)
「ワン!」
「……ん?」
ドアが開かれる音とともに、どこかで聞いたことのある鳴き声が聞こえる。
鳴き声が聞こえた方向へ振り向くと……
「ワン!」
「うわっぷ!」
そこには、鳴き声の主である真っ黒の犬。ブラックともう1人。手にお粥らしきものが入った茶碗を手に持った人物。
「やぁっと起きましたか……おはようございます」
「ああ……おはよう」
いつものように、さも当然かのように、袖女がそこにいた。