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プロモーション戦終了後 その3

 黒のクイーン、斉藤美代は驚愕していた。


 驚愕の原因はもちろん、田中伸太だ。


 時は浅間ひよりが医務室の前に到着する数分前、田中伸太の肉体を解析する準備がついに整い、まず血液を採取するため、注射器を腕に刺そうとしたところだった。


「っ……な!?」


 突如、田中伸太の肉体から黒い正方形が出現し、近くにいた医師や技術者たちにぶつかって一掃。そのまま黒い正方形は4つに分離し、田中伸太の体を持ち上げ、ドアを突き破り外へと出て行ってしまった。


「ぐっ……」


(スキルさえ使えれば……!)


 私のスキルは狭い場所で使うと他者を巻き込んでしまう可能性があるため使えない。指をくわえて見ていることしかできないのだ。せめて田中伸太の体の行方を追うことさえできれば……


「斉藤様!!」


 隣にいた凛の言葉に、私は思考の世界から現実世界へと帰還する。


 そうだ。今の私は1人ではない。優秀な部下である凛がいるではないか。


「凛! 監視型魚雷を!」


「了解!」


 凛は両手を合わせ、その先端を自分の前に向ける。


「監視型魚雷、発射!」


 そしてその後、両手の先端から手のひらより少し大きめのサイズの魚雷が発射され、硬いはずの床にドボンと着水する。


 いつ見ても不思議な光景だ。これぞスキルが標準装備となった現代ならではだろう。





スキル名 地面アース魚雷トーピード


所有者 天地凛


スキルランク hyperハイパー


スキル内容

 地面に潜る特殊な魚雷を手のひらを合わせた先から発射する。様々な種類があり、一つ一つ効果が違う。





 監視型魚雷は凛が持つ魚雷の一つで、1時間の間、対象物を追尾し続け、魚雷に取り付けられたモニターからスキル所有者のみが映像を見ることができる魚雷だ。


 さすがに音声までは拾えないが、田中伸太がどこに行ったかぐらいは知ることが可能だ。


「魚雷が追いつくまでには少し時間がかかります」


「どのくらい?」


「距離にもよりますが……このステージ内にまだいるのであれば、1分ほどで」


「そう。お願い」


 私は凛との会話を終え、ドアが吹っ飛ばされた出口に視線を向けた。


 出口にはぶっ倒れたドアと、気絶したボディーガードが2人。


(すぐそばにいた技術者たちは気絶させず、ドアの外にいたボディーガードは気絶させた……?)


 何かの狙いがあってわざと気絶させたのかとも考えたが、普通に考えてあの一瞬でそこまでの分別がつくだろうか? ()()はそれができる代物だと言うことか。


「……ん?」


 出口の惨状を観察していると、ふと、ボディーガードと破壊されたドアに紛れて、長方形の物体が落ちていることに気がついた。


「これは……スマホ?」


 ドアとボディーカードをどかし、その長方形の物体を確認すると、それはスマホであることがわかった。


 一瞬、ボディーガードが持っていたものかとも思い、ボディーガード2人のポケットをチェックしてみたが、しっかりと2人分のスマホが出てきた。



 これが意味するもの。それはつまり――――



()()が外に出た時……出口の外にはボディーガード以外の誰かがいた」



 新たに判明した確定情報。すぐさまこのスマホを解析したいところだが、それはさすがに無理だろう。今回の田中伸太の解析もかなり無理を言ってやってもらっていたのに、次は誰のかもわからないスマホの内部情報を解析しろなんて言われたら、私が技術者の立場でも不信感が生まれる。これは後で秘密裏にどうにかするとしよう。


(とりあえず、今は凛の魚雷の追跡を待って……)


「失礼します!!」


 ドタドタと音を立て、下にいるボディーガードを何の抵抗もなく踏みつけながら、女性兵士が医務室の中に入ってきた。額には汗が滲み、息切れもしているところを見ると、かなり急いで来たことがわかる。


「貴様、無礼だぞ、斉藤様の前で――――」


「構わないわ凛。それよりもあなた、ここに来た理由を教えなさい」


 なぜ凛を止めたのか、その理由はこの女性兵士に既視感があったからだ。


(この子は確か、長官のお気に入りだったはず……)


 長官ははっきりってそこまで有能な人物と言うわけではないが、その権力はなかなかのもの。そんな人物がいつもそばに置いていた女性兵士が急いで来ている。


 ほんのちょっとしか可能性はないが、もしかしたらこの件についての新たな内容かもしれない。





(そうではなくても、何かあったのは間違いない――――)









「長官が……撃たれましたァァ!!!!」









 涙で目を滲ませながら放った一言に、私はもちろん、周りにいた人物全てが絶句した。





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