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ギリギリギリ

 永遠とも、一瞬とも思えた30秒。それは僕の拳のラッシュが終わるとともに、元の1秒へと戻っていく。


 ホコリ一つ動かなかった世界は秒針を刻み始め、風は動き出し、静かだった世界から少しずつ、物音と人の声が戻り始める。





 やがて、世界が元通りになると同時に……





「吹っ飛びな」





 鼓膜が破れそうになるほどの爆音と大竜巻をあげ、伸太は地面にめり込んだ。









 ――――









 近くにあるビルを破壊するほどの大竜巻。一瞬のうちにそれが形成され、爆音を上げた時、私は歓喜した。


(よし!!)


 その私と言うのはもちろん、斉藤美代。この私だ。


 黒のキングの押されようを見て、まさか駄目なんじゃないか、負けてしまうのではないかと言う思いが一瞬頭をよぎったが、どうやら杞憂だったらしい。


「やりましたね」


 隣でともに戦いを見ていた凛が話しかけてくる。いつも通り、クールに見えるが、拳の先や足の先を見ると、汗がにじんで垂れているのが確認できた。


(さすがの凛も熱くならざるを得なかった……それぐらいの勝負だったってことね)


 本当に、今までのプロモーション戦がおままごとに見えるほどの、ワンランク上の戦いだった。一撃一撃のスケールも、対戦時間も何もかも違う。もし白のクイーンの薔薇ローズの城(・キャッスル)がなければ、特設ステージは瓦礫の山になり、周辺は焼け野原になっていたかもしれない。


 私も外に飛んでいく大きめの瓦礫やら何やらを下に落としたりはしていたが、それを加味しても、白のクイーンの今回の活躍はなくてはならないものだった。


(今回ばかりはあの子のおかげだと言わざるを得ないわね……)


 とにもかくにも、今回の件について、東京派閥には問いたださなければならない。これは明確な契約違反。同盟の上下関係にも影響する問題だ。


(でも、まずは観客にプロモーション戦の終了を伝えなければ……)


 今更避難勧告を出すよりも、プロモーション戦はこれにて終了ですと伝えた方がわかりやすいし、こちら側がやらかしたことをバレずにすむ。いろいろなことを考えれば、このまま安全に終了しましたよ〜と言ってしまった方が何かと都合が良いのだ。


(よし……)


「凛! 司会者にプロモーション戦の終了を伝えなさい! 医療班は黒のキングの治療、急いで!」


 私の指示に従い、凛は特設席から出て司会者のもとに向かい、医療班は宙に浮く担架を連れ、黒のキングのもとへ向かっていく。



 ただ、それに待ったをかける人物がいた。



「待て!! 近づくな!!」



 黒のキングから放たれたその言葉は、残念ながらその声が届く前に、伸太が沈んだはずの場所から氷が地面をつたい、ステージいっぱいに広がった。


「ひっ……!」


 医療班はギリギリのところで氷に巻き込まれずに済んだが、当の本人である医療班にとっては、自分が被害を受けることよりも、何よりも……





「まだ……動くのかよ……」





 あれだけの攻撃を受けて――――





「……やっぱり、か」





「グルリュー……」





 ホコリがついた程度しか傷のない、膝すらついていない田中伸太の姿に、愕然としていた。

 

 









 



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