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有利にするのではなく、決める

 尻尾の攻撃に甘んじていれば、安全に有利を取りつつ、試合を勧められたはずなのに、あろうことか距離を取ることもなく、伸太は地面を大きく踏み込み、距離を近づけてきた。


 まぁ、距離を詰めると言う選択肢が絶対にないかと言われると一概にはそうとは言えない。なぜなら、僕が提示した距離を取ると言う選択肢は戦いを有利に進めるための選択肢だが、ここで距離を詰めると言う選択肢は、戦いを決める選択肢だからだ。


 細かく言うと、尻尾だけを飛ばすのならば、戦いを決めるほどの決定打にはなりはしないが、尻尾に加えて自分の体での攻撃をプラスすれば、相手から見て対処しなければいけない攻撃数が2倍になり、一気に盤面処理の難しさが倍増する。


 それに加えて体での攻撃になるため、一撃の威力も尻尾の比にならない。骨が折れるところでは済まないだろう。最悪の場合、上半身と下半身がおさらばする可能性もある。


 ただそれはうまくいけばの場合の話だ。体を前に出すと言うことは、その分相手に攻撃のチャンスを与えると言うことでもある。ハイリスクハイリターンなのだ。


 安定性で言えば、距離を取る選択肢の方がローリスクであり、問題のない選択肢と言える。


 なので、いくら勝負を決められる可能性が生まれるからといって、詰めることはないと思われたのだが……



(まさか詰められるとはな!!)



 意表を突かれたが、動き自体には何の支障もない。ただ目の前に来た攻撃に対処するだけだ。それに加えて反撃も絡める。これをするだけ。


(いや、まて、相手がわざわざ近づいてきてくれたのなら、やることは簡単じゃないか!)


 そうだ。突発的な行動すぎて正常な判断ができていなかった。相手からわざわざ距離を詰めてきてくれたのなら、やることは1つじゃないか。


(スキルを使えば……勝ちだ!)


 引き延ばす時間は30秒。発動するタイミングはすぐ。発動した瞬間、勝ちだ。


(発動――――)


 世界がゆっくりになる。その時、胸に強い衝撃を感じた。


(蹴りっ……!?)


 スキルが発動した瞬間、腹に蹴りを撃ち込まれた。


 痛みによって筋肉が緩み、足がガクガクと震え始める。1番防がなくてはならない体での攻撃。これをもろに受けてしまった。


「う……ぐお……」


 もともと、体の老化の関係上、通常の伸太の状態でも一撃もらえばかなり致命傷となりかねない威力だった伸太の攻撃。()()によって身体能力の上がった今、さらに威力は向上し、一撃でゲームオーバーレベルの代物になってしまっている。


 あまりの激痛にその場で下を向き、うずくまってしまう。スキル自体は発動しているため、この間に攻撃される心配はないが、問題はその後、スキルが解除された後の世界でどう立ち回るかだ。


(やられた……)


 スキル発動直前に生まれた一瞬の油断が、この事態を引き起こしてしまった。


(この歳になっても……まだまだ未熟か……)


 自分の危機管理能力のなさにうっすらと笑みを浮かべつつ、戦いのために体をむくりと起こした。


 

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