伝播する異常性
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新たな生物の産声。それを感じ取ったのは、黒のクイーンとキングの3人だけではなかった。
「あれは……?」
待合室でブラックと一緒に戦いを観戦していた浅間ひよりも、3人と同じく、半透明の紫色のオーラをまとった田中伸太に何か不穏なものを感じ取っていた。
(彼の奥の手……? いや、それにしては脈絡がなさすぎる)
それに、浅間ひよりはなんとなく、あれは伸太の狙いの中で行われたものではないと感じ取っていた。
(一体何が……? とにかく、外に出て肌身で確認しないことには……)
外に出て、役に立てるかどうかはわからない。だが、こうやって安全な場所で見守っているよりも、そっちの方がよっぽどいいと感じた。
「ブラック! 行きますよ! ……ブラック?」
「ウ、ウウウ……」
ブラックを連れて外に出ようとブラックの方を振り向くと、そこにはいつもの好奇心旺盛なブラックはなく、ソファの隅っこでガタガタと震えていた。
「ブ、ブラック?」
(そんな……大阪派閥の牛を前にしても、対して怖がっていなかったブラックが怯えて……)
だが、こんなところに1人だけにさせるわけにはいかないため、嫌がるブラックを無理矢理引っ張りだし、抱っこして外への廊下を走っていった。
――――
少し時は遡り、伸太から黒い正方形が現れた直後のこと。
「は、え……!?」
私、黒のクイーンである斉藤美代はそこに現れた黒い正方形に、驚きを禁じ得なかった。
(馬鹿な!? あれはまだ試作段階のはず……というか、約束が違う!)
あの会議の前、私は異能大臣と約束を交わしたのだ。完成したらすぐに神奈川派閥に優先して渡すのと交換条件でウルトロンの受け渡しを大々的に行った。
結果としては、憎き黒ジャケットに受け渡し自体は阻まれてしまったが、異能大臣との契約内容はあくまで受け渡しを大々的に行うことで、受け渡しの結果自体は関係ない。異能大臣もその辺は納得してもらっていた。
なのに、あれは神奈川派閥に渡されず、なぜか黒ジャケットの疑いがある田中伸太の体から出てきた。
(すぐに異能大臣に電話を……いや違う。今は観客を避難させることが優先!!)
「どうされましたか?」
放送席にこの状況を伝えるため、特設席を立つと、隣にいた凛から疑問を含んだ言葉を投げかけられる。
「……あれはまずいわ。今すぐ放送席にこの事態を伝えて、観客を避難させないと……」
「……! 分かりました。私もお供します」
「ええ、ありがとう」
私は改めて、凛とともにステージ内部へと歩いていった。




