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悪魔の目覚め

 伸太に拳を入れようと、インパクトした瞬間、拳が体ごと後ろに吹っ飛ばされた。


 普通ならば間違いなく次の一撃が入る大チャンス。そう考えるだろう。事実、伸太もそう思っていたらしく、チャンスを逃すまいと遠心力を利用した最大火力を打ち込もうとしていた。


 ただ、それはスキルがない場合の話。


 そもそもの理由として、なぜこれが伸太にとって、大きなチャンスになっているのか。それは上半身が後ろにのけぞっているからだ。


 後ろにのけぞった体を元に戻すには、普通の時よりもタイムラグがある。体が元に戻るまでは無防備。だからこそチャンスなのだ。


 なればこそ、僕のスキルで1()()()()()()()()()()()()()、容易にそれがなかったことにできる。チャンスをチャンスではなくさせることができるのだ。





スキル名 一寸先は闇


スキル所有者 丸山大吾


スキルランク masterマスター


スキル内容

 対象を指定し、対象の1秒間を何時間にも引き伸ばすことができる。連続で使用はできない。30秒間までなら引き伸ばした時間の中で行動することができるが、それ以上になると生物への攻撃は不可能。最大で引き延ばせる時間は1時間まで。





 これで僕の時間の1秒間を何倍にも引き伸ばし、その間に体を起こして反撃のアッパーを決めた。



 わけだが……



(これは……)



 倒れ行く伸太を守るかのように、目の前に現れた黒い正方形。それは紫色のオーラを出しながら、こちらに体当たりしてきた。


 さらに、黒い正方形は僕に体当たりした後、4つの小さな正方形に分離し、倒れた伸太に紫色のオーラを纏わせ、起き上がらせる。


「ぐおっ……!?」


 勢い自体はそこまでではないが、正方形のかくばった角が中々に痛い。満身創痍の体には効く。


 しかし、僕には痛みよりも、いまだに倒れた伸太を守るように立ちふさがる黒い正方形に意識を持っていかれていた。


 なぜそこまで気になるのか。それは何を隠そう、黒い正方形に見覚えがあったからだ。


(あれは……いつだ……?)


 僕は混乱する頭で何とか情報を整理する。


 ()()は体に埋め込まれないと効力を発揮しない。だとしたらいつ埋め込まれた? 伸太が東京派閥にいた間? それともそれ以降? いやそもそも、伸太は()では無いはず。()以外が()()を埋め込まれれば廃人になってしまうはず……なのに……


 とにかくこれは異常事態だ。額から汗がつたう感触がする。()()は発動したからにはもう止まらない。


 今考えてみれば前触れはあった。伸太の瞳が紫に変わったあの現象。今思えば、()()が発動する前兆だったのだろう。


 チラリと特設席を確認すると、黒のクイーンも異常事態を感じ取ったのか、ステージの中へと消えていった。おそらくは司会者を通じて、観客席の一般人に何かを伝えようと言う算段なのだろう。


 続いて、白のキングである八木源五郎。通称はっちゃんが隣に降り立った。


「まるちゃん! あれは……」


「……ああ、間違いない」


 ()()は戦争全盛期の汚点。人を人ならざる者へと変える非人道的インターフェース。


(僕1人では厳しい……だが!)


「はっちゃん……僕1人でやらせてくれ」


「……! まるちゃん、何を……」


 ()()が僕たちが戦っていた頃と同じ強さを持っているなら、全開の僕でも倒せるかどうかわからない。だが、それでも1人でやりたい理由があった。





「……弟子を好き勝手いじくられて、黙ってる師匠がいるかよ……!」





 ドクン!!





 心臓の鼓動のような音が聞こえたと同時に、4つに分裂した小さな正方形は、潜水した時のような音をわざとらしく響かせ、順番に伸太の中へ入りこむ。





 4つ全てが伸太の中に入り込むと、重苦しいプレッシャーとともに空気の渦巻きが伸太を中心に発生する。





 やがて伸太の体の色が紫と黒が混ざり合った色に染まり切り、姿形が変化していく。





(なっ……変形!? 馬鹿な、僕が知る限りでは肉体が変形するほどの変化はないはず――――)





 しかし、僕の脳内で結論を出すよりも早く、紫と黒が混じった何かが剥がれ落ち、変形した肉体があらわになった。





 肉体は()()の発動による超回復で傷一つなくなり、回復した両腕は紫色のオーラが固まってできた鎧で武装され、腕の先、拳には腕に武装されたものと同じ素材でできたドラゴンを彷仏とさせる爪が生え、同素材でしっぽも生えてきている。髪色も真っ黒から紫がかった黒に、瞳は完全な紫へと変化していた。





「グルルルル……」





 そして、普段の伸太からは想像もつかない野生の中で生き抜いてきたかのような、闘争心をむき出しにした表情。それが普段の伸太ではないことを、何よりも伝えていた。





「ウオオオオオオオオ!!!!!!!!」





 この世の生物のどれにも当てはまらない咆哮を上げ、今、新たな生物が今ここに誕生した。


 



 

 

 

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