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驚嘆

(なんだったんだ……一体)


 乱入してきたよくわからないやつを空気反射で吹っ飛ばすと、俺は再び、もうすぐ始まる戦いに闘志を燃えたぎさせようとしていた。


「……あ」


 よくよく考えてみると、壁に叩きつけたせいであのよくわからないやつが死んでもらっては困る。もしかしたら中断になってしまうかもしれないからだ。


 大丈夫かと、機械じかけの担架に乗せられて運ばれていくよくわからないやつの体は、血まみれになりながらもピクピクと動いていた。


「ほっ……」


 どうやら大丈夫そうだ。


 いつの間にかあれだけ騒いでいた観客も静まりかえっている。よくわからないやつを死にかけにしたのは、俺の強さを知らしめるための宣伝効果もあったようだ。


「……悪いな。急だったもんで変な輩が飛び込んできてしまった」


 黒のキングが謝罪してくる。


「いいよ。この程度じゃ疲れもしないし」


 が、俺の反射はMP制ではない。いくら使っても疲れないため、黒のキングの謝罪を許した。


「それよりも……謝る暇があるなら、さっさと始めよう。その方が俺的にもありがたい」


「……! そうだな……」


 俺の言葉を聞き、黒のキングは顔を俯かせ、ニヤリと笑う。あんなもの俺の体力消費のうちに入らないのだと気づいたらしい。


 もっとも、俺からすればまだ気づかなかったのかと思ったが。


「司会者! 早めに勝負を始めてくれ。こっちの若僧が待ちきれんようだからな」


『はい!』


 黒のキングが司会者に話しかけ、司会者は素直に従う。なるほど、司会者でもキングには逆らえないらしい。


「大丈夫だとは思うが……準備はいいな?」


「オッケー」


 準備万端、感度良好。体にもうまいこと力が入る。いきなりだった分、ベストコンディションとは言えないが、それでも十分に戦えることは間違いない。


『それでは! エキシビションマッチ――――』


 足に力を入れて、上半身を脱力させる。


 闘力操作を発動、全身の身体能力を強化。反射をきき腕である右腕に使用。だらりと上半身を下に落とし、風の抵抗を少しでも軟化。開始の瞬間と同時にインパクトを叩き込めるようにする。


『――――開始!!』


 瞬間、俺の動きは史上最高の速度となった。









 ――――









 観客たちは思っていた。この男は何者なのかと。


 それもそのはず、神奈川派閥で注目されがちなのは、基本的に女性ランキングの方で、男性ランキングの方はそこまで注目されない。それでも他の職業と比べると、注目度は段違いなのだが。


 よって、田中伸太と言う名は神奈川兵士に詳しかったり、マニアだったりでないとわからない。誰も知らないし、よくわからない。そもそも黒のキングに指名されるほどの器なのか? それが観客席にいる人々全体の本音だった。



 が……そう思う人など、試合が始まってからは1人もいなくなった。



「ふっ!」



「かあっ!」



 人を形として認識できないほど速く動き、縦横無尽にぶつかり合う2人。衝撃音は今までの誰よりも大きく、多い。


 それが開始僅か2秒で行われたのだから、文句を言う人など、最初からいなかったかのように黙りこくってしまっていた。


「ふふん……」


 その頃、待合室にいた浅間ひよりは、テレビに映る観客たちを見ながら、1人ソファで得意げな顔をしていた。





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