暗躍する生物
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倉庫の惨状を見た私は、とりあえず発見者を増やし、状況を冷静に推理するため、近くにいた職員数人を呼び出し、一緒に倉庫の中をチェックしていた。
「ひどい……荒らされようですね」
「ええ。そうね」
最初こそ、警備員の死体に嗚咽を覚えたり、顔面を真っ青にさせていた職員たちであったが、数分も経てば慣れてきたのか、最初よりは顔色を良くさせていた。
それより、チェックすべきは倉庫の現状だ。
頭を吹っ飛ばされ、大の字に寝転がる2つの死体。それは自然に起こった事故とはとても思えず、明らかに人為的な何かが関与していた。
人間以外の生き物の犯行かとも思ったが、だとしたら荒々しい噛み跡が付いていたり、そもそも死体自体がぐちゃぐちゃのぐしゃぐしゃになっているはずだ。
よってこれは神奈川派閥に良い印象を持っていないどこかの誰かの犯行と言うことになる。
ぱっと見わかるのはこれくらいだ。これ以上はしっかり調べてから推理するとしよう。
「ふむ……」
私は死体周りではなく、おそらく上級ポーションが置かれていたであろう壁に張り付いている棚をチェックする。
棚といっても、中身が見えないタイプではなく、中身が見える調理棚のようなタイプだ。
犯人は上級ポーションが目当てだったのだろう。他の倉庫の物が荒らされていて、物自体は取られていないのに対し、上級ポーションだけごっそりと全てなくなっていた。
「……ん?」
しかし、1分のポーションだけは破損して中身が飛び散って床にこぼれているのが確認できた。
「これは……」
と言うことは、この警備員2人と犯人は戦闘において、そこそこ拮抗していて、その戦いの衝撃の余波でポーションの1部が破損してしまったと考えられる。
(……と、素人なら思うでしょうね)
警備員2人は一方的に殺された。その確証が私にはあった。
その確証とは、2人の死体と他の物の荒らされ具合だ。
2人の死体は頭だけが吹き飛ばされていて、他の肉体部分はほとんど外傷がなかった。
犯人との戦いが余波が出るほど拮抗していたのなら、肉体にも何かしら戦いの後が残っていておかしくないはずだ。なのになぜ2人の警備員の死体に跡がないのか。
答えは簡単。その戦いがあまりにも一方的すぎて、戦いになってなかったからである。
そして他の物の荒らされ具合。他がほぼ全て使い物にならなくなるほどズタズタになっているのに、上級ポーションだけはほんの少ししか荒らされていない。これは戦いが終わった後、何か証拠が残ってしまい、その証拠隠滅のために他の物も荒らされたと推察できる。
これらの予想から、犯人は相当の実力者だが、この手の証拠隠滅は下手な人物だと考えられる。つまり犯罪慣れしていないのだ。
そして、肝心な犯人の正体だが、ある程度目星はついている。
「……あなたたちはここにいて。私は監視カメラの様子をチェックしに行くわ」
私の予想が正しければ、犯人の姿は見えないはずだ。




