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執念バトル その7

 三人称視点です〜

 浅間ひよりの手を掴み、攻撃手段を封じることによって、距離を取る方法以外での詠唱の時間を稼ぐことに成功した田中イズナ。


(勝った!)


 彼女の心を支配した最初の感情は、勝利による高揚感だった。


 それも当然だ。既に詠唱は完了している。私を中心に発生したこの魔方陣が何よりの証拠だ。後はこれが空気中に浮かび上がり、魔方陣が立体的になれば準備は完了する。超無双モードへ突入するのだから。


 が、勝利を確信する気持ちとは裏腹に、脳は最後まで気を抜くなと、体に警告命令を出していた。


(勝利を確信した時こそ、最大限に警戒を強めるべき……)


 人間、そういう時が一番自分の弱点をさらけ出すタイミングなのだ。


 気を抜いてはいけないと自分に喝を入れ、その証明に浅間ひよりの拳を握る力をよりいっそう強める。その握力はもう力ずくでは抜け出せないほどとなっていた。


 対して浅間ひより。彼女の心は自身の置かれている絶体絶命な状況とは裏腹に冷静、かつ闘志を燃えたぎらせていた。


(ここだ……このタイミングしかない! 田中イズナの不意をつくタイミングは!)


 実は、田中イズナがシールド結界フィールドを発動するための時間を作るか、一気に勝負を決めてくるかの時、意識的に1つ目の択を選ぶと同時に、無意識的にとあることを考えていた。



『彼ならどうするか?』



 浅間ひよりの中にいるイマジナリー伸太は、次のような回答をしていた。



『何を選ばれても対応できる動きをする』



 それができたら苦労しない。が、彼なら本当にそう言いそうだと、浅間ひよりは口元をほんの少しだけ上に上げていた。


 それと同時に理解していたのだ。私が読み合いで勝てるわけがない。ならば、対抗するにはどんな行動をされても打ち勝てるようにするしかない。


 しかし一体どうしたらいいんだと、悩みながらも接近戦の殴り合いが始まった時、私はとあることに気づいた。


(接近戦の動きなら読める!!)


 戦闘全体を見ての思考力は田中イズナに遠く及ばないが、その中でたった唯一、接近戦だけは田中イズナの動きが予測できたのだ。


 私が唯一上をいける局所的なポイント。体へのダメージで動きが読めても体が動いてくれず、攻撃をもらってしまうことが多いが、ここを利用しない手はなかった。


 だからあえて放ったのだ。受け止められるとわかっていたパンチを。


 無論、これは無意識的に考えていたこと、言うなればサブプラン以下の考えだったため、選択肢にすら入ってこなかったが……今になってそれが現実味を帯び、脳みそが思考の奥底から引っ張ってきて、初めて認識した。





 田中イズナに浅間ひより。互いに考えていることは違うが、たった1つ、勝利のためだけに今の一瞬一瞬を捧げていた。





 そしてお互いに感づいている。





 決着はもうすぐそこだと。

 

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