執念バトル その3
私が選んだ選択は、結局1つ目であった。
「だあっ!」
足で地面を強く蹴り、さらに速度を早める。剣を1秒でも早くかいくぐり、結界名を詠唱させないためだ。
田中イズナのスキル『結界師』は一見万能なスキルに見えるが、スキルと言うのはどんなものにも弱点があるもの。無論、『結界師』にも弱点はある。
スキル名 結界師
所有者 田中イズナ
スキルランク hyper
スキル内容
使いたい結界の結界名を詠唱することで、特定の結界を発動する。
使用できる結界一覧
『剣結界』
『盾結界』
『魔法結界』
その弱点とは、必ず口で結界名を詠唱する必要があるところだ。
戦闘に置いて、口の動きと言うのはかなり遅い部類に入る。
どれくらい遅いかと言われると、一言口に出す時間があれば、何度も拳を交換できるぐらい遅い。
つまり結界師はその性質上、接近戦に向いていないのだ。
それこそ根本的な身体能力、武術に対する知識と技術が伴っていれば話は別だが、接近戦に強いスキルがはびこっているこの時代で、しばらくの間スキル無しで戦うなど、一部を除いて愚の骨頂だ。
田中イズナもこのことがわかっているため、使用できる結界には遠距離から中距離のものを選んでいる。結界を切り替える時に十分な時間を手に入れるためだ。
(田中イズナも身体能力向上のためにトレーニングは欠かしていないでしょうが……それでも不利なことには変わりない)
剣結界は私に突破されつつある。なら私を近づかせないためには、いまだに攻略されていない盾結界を張るしかない。
魔法結界も考えたが……あれは時間制限付きで制限以上の出力を出せる超攻撃的な結界だ。いわば切り札。
一気に相手を沈める分にはいいが、その分他の2つと比べて隙が大きく防御力に劣る。今の状況には向いていない。
よって今結界を切り替えるとしたら盾結界しかない。そして切り替えない択よりも、切り替える択の方が多方面において対応できる。
田中イズナの方が有利なこの状況では、心理的にもより多くの状況に対応できる択を選ぶはずだ。
勝負とは相手の意表をつくことも重要だが、時として安全策を取ることも重要である。こういう瞬時に物事を決めるときはなおさらだ。
(これなら――――)
田中イズナまで後3メートル。
しかし、田中イズナの取った行動は、私の考えていた距離を取る行動と全く逆。接近して距離を詰めてきた。
(なっ、どういう……)
田中イズナまで後――――
思わず頭の中で一体何の狙いがあるのか思案しそうになるが、そんな時間はあるはずもなく、私と田中イズナによる取っ組み合いが始まった。
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