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執念バトル その1

 明日は休憩。その代わりにちょっと文字数増量。

 戦うと決めて最初に行ったことは、あの薄ら笑いを浮かべたムカつく顔に拳を叩き込んでやることだった。


 こちらに向かって刀が近づいてきていたが、そんなことどうでもよかった。


 ただあの顔に自分の拳で後を作ってやりたい。その思いでいっぱいだったから。


 剣が刺さって動かない腕を無理矢理動かす。腕からは吹き出る血と共に、痛みが神経を伝って脳に届けられる。


 腕から出る血はまるで腕自身が痛みに耐えきれずこぼした涙のよう。しかし、それを見て弱々しい印象は抱かず、むしろその気高い姿に、動いてくれてありがとうと感謝したい気持ちになった。


 そうやって撃ち込まれた拳はオーラによる光と共に、田中イズナの顔面に激突。まるで釘を打ち込むハンマーのように、それはそれは深いクレーターを作った。


 そしてそれは、目の前の敵をよろけさせ、一体何が起こったんだと錯乱させるには充分な威力だった。


(今のうちに……!)


 隙を作ることに成功したとは言え、その隙自体、コンマ数秒……下手したら1秒以下の本当に細い隙だ。ゆっくりとしていてはいられない。


 すぐさま自由になった手で他の部位に刺さっている剣を掴み、一気に引き抜く。引き抜くと同時に鋭い痛みが体を伝うが、先に言った通り私に与えられた時間は少ない。痛みを無視し、私は次々と剣を引き抜き、やがてついに最後の1本を体から抜き切った。


 その時には田中イズナも何が起きたのか理解して体制を立て直したようで、鼻から垂れた血を手で拭い、こちらを射殺さんとばかりに睨みつける。


 激情のままにこちらに向かってこないのは、自分から接近戦に望むことはないと考えての判断だろう。調子に乗ってオーラを無駄に消費した私とは違い、怒りの中でもしっかりと冷静さを保ち、その思考の通りに体を動かしている。全く以て頭が下がる。


 しかし、だからといって勝ちを譲るわけにはいかない。あちらの方がいくら行動として正しかろうと、最後の最後、このステージに立っていた者が勝者だ。


「行くぞっ!」


 血に塗れた体を持ち上げ、田中イズナに駆け足で近寄る。腕や足を動かすたび激痛が走るが、私はその度に彼の姿を頭の中で形作っていた。


(彼はどんな時も、これより酷い体になりながらも戦ってきた……なら!!)



 ――――この程度で私がへばってどうする!!



「私に一撃入れて調子に乗ってるみたいですけど……甘いぞ!!」


 先ほど、怒りの中にもしっかりと冷静さを保っていると言ったが、それでも私に対しても怒りを胸の内に留めきれなかったらしく、先輩に対しての敬語をかなぐり捨て、自分の周りに無数の剣を生み出し迎撃してくる。


(見える……見える!!)


 調子に乗っていた頃は向かってくる障害物を破壊することしか頭になかったが、今見てみると、向かってくる剣の軌道はすべて直線。要するに先読みしやすい軌道をしていた。


「これなら!」


 一旦ストップするのと同時に両足を地面につけて、体を自由に動かせる形にした後、なんと剣を全て回避することに成功したのだ。


「……ちっ」


 しかし、完全に回避に成功とまではいかなかったようで、剣が掠った部分から血が滲むのを感覚で感じていた。


「……はっ?」


 もっとも、田中イズナは剣を回避されたことに意識が向いて、気づかれはしなかったが。


 ただ、回避された時の案も用意していたようで、さらに新しく剣を生み出し、私に向かって射出すると同時に、先ほど回避した剣を田中イズナ側に戻ってくるように向かわせる。


 前と後ろからの挟み撃ち。これにはかすり傷では済まないと、私の脳が警報を鳴らすのがわかった。



 ……が、やるしかない。



 私は駆け足を止めることなく、前側から迫りくる剣との距離をさらに縮める。よって後ろから向かってくる剣よりも早い段階で着弾することになるわけだが、剣が着弾する寸前、私はほんのちょびっとしか残されていないオーラでほんの少しだけ加速し、ギリギリのところで神回避に成功した。


 その余韻に浸ることなく、後ろからさらなる剣が飛び込んでくるが、そこは――――



(気合で避けろぉ!!!!)


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