気がつけば……
「ぐ、う……」
(さ、刺された……刺された!!)
「が、ああああ…………!!!!」
腹に、腕に、足に、剣が突き刺さる。
ただ単に痛いだけだけではない。すぐそこで不敵に笑う田中イズナが、あともう少しで届く位置にいるのだ。
もうすぐで、もう少し足を前に、オーラで少しでも空を飛ぶことができれば、あの憎たらしい顔面に拳を叩き込むことができるのに、その一歩が踏み出せない。
それがどれだけ歯痒く、悔しいなんて3文字の言葉では形容できないほど心を蝕んでいるか、自分で味わっておきながらどんな言葉で表現したらいいかわからない。
そんな気持ちを傷つきすぎた体全部で味わっていると、なんと田中イズナはわざわざ自分の足場にしていた剣を地上に刺し、足を地面に着地させてこちらに歩いてきた。
「ぎっ……」
あまりの怒りに、体がブルブルと震え出す。
剣が突き刺さっているおかげで剣の刃が何度も肉に当たり、体の節々に痛みが走るが、私はそんなこと関係ないと言わんばかりに、痛みを感じながらも体を怒りに委ねた。
……仮に体の震えを止めようとしても、ここまで傷ついた体では、脳の命令に答えてくれるかは怪しかっただろう。
「いやぁ〜……それにしても、ずいぶんとやってくれましたねぇ、先輩?」
私の意志など関係なく、田中イズナはこちらの目と鼻の先まで近づき、煽るような表情で腕の打撲傷を見せつけてくる。
(あなたのせいで私はこんな傷を負いましたよってアピールですか……)
この後に及んでそんな幼稚なことをするとは。強さの割には子供っぽいというか、なんというか……
「……こんなに近くまで来て……ぶん殴られたいんですか?」
「今の先輩では無理ですよ……もしかしたら単純な殴り合いでも勝てるかも」
田中イズナの言っていることはハッタリではない。仮に私の体から剣が抜き取られ、接近戦になったとしても、お互いの体のコンディションには天と地ほどの差がある。勝つのはおろか、体力半分近く削りとれれば御の字レベルだ。
「じゃ……何のためにこんなに近くまで?」
「……答え合わせしてあげようと思いましてね。浅間先輩が今もなお感じている感覚のズレのことについて……」
「!? ……なんでそれを……」
自分自身の現状を瞬時に見分けられたことに驚き、思わず口から疑問の言葉がこぼれてしまった。当の田中イズナは自分の予想が当たっていると察したらしく、私の言葉を聞いた途端、口元を大きく歪めた。
「なんでって顔ですね!! 図星なんですね!! 口に出てましたもんね!!」
「ぐっ……」
「はぁー……出来の悪い先輩を持つと良いことないな〜」
田中イズナは私の耳元に移動し、周りに聞こえないように一言、この言葉を漏らした。
「私に遊ぶみたいに動かされた気分はどうですか?」




