空中戦 その2
(やっぱり剣とはわけが違いますね……厄介だ……!)
生み出されていく盾を次から次へと破壊しながら、私はその厄介さに苛立っていた。
剣とは違い、盾は横の面積が広い分、1枚でガードできる量が剣とは段違いだ。
それに加えて盾自体の耐久度も剣に比べて高い。よく考えてみれば、もともと盾は剣と違って使用者の身を守るために作られたものだ。素材が同じ鉄とは言え、その耐久力は剣の比ではない。
おかげでフラッシュナックルの威力は殺され、本体へと攻撃が届いてない。
ただ、私の心の天気は曇らず、むしろさらに快晴に、カラッと、雲1つない空を展開していた。
(オーラナックルしか使えなかった時は手も足も出なかった結界……でも、今の私はその結界といい勝負をしている……!)
その理由は自分への成長感。今までできなかったことができるようになったと言う喜び。それを全身で味わい尽くし、享受していたからである。
成長への快感の前では、少しの厄介さなど皆無に等しい。
今の私はイケイケノリノリなのだ。戦いとは時に流れも必要である。多少相性が悪いスキル持ち相手でも、ゴリ押しでどうにかなる。気持ちの問題だ。
考えている間にも、いくつもの盾がこちらに近づき、表面を叩きつけようとしてくる。俗に言うシールドバッシュだ。
「けど……」
地面がある地上戦なら有効な戦法だったかもしれないが、空中戦ではその限りではない。右と左に加え、上と下にも回避スペースがあるのだから。
「むん!」
私は体を低下させ、シールドバッシュを綺麗に回避する。シールドバッシュした盾たちはお互いにぶつかり合い、ものの見事に鉄塊となる。
そしてそのまま盾の海を掻い潜り、フラッシュナックルをできるだけ近い距離で叩き込む。その距離、実に5メートル。
(これなら!!)
これならいくら盾を間に挟まれようと、確実に本体にダメージを与えられる。
「甘い!」
しかし、上と下にも回避スペースができたのは田中イズナとて同じ。田中イズナが乗っているものは盾結界の効力によって剣から盾に変わったが浮遊能力を付与するポイントは変わっていない。
そのため、田中イズナも体を下に下げ、回避を成功させた。
(ぐっ……!?)
空中戦はこれがあるから怖いのだ。地上戦で培われてきた経験が通用しない。地上戦では不条理だろうと思われることが、空中戦で起こってしまう。
(それでも……!!)
不条理だと感じるのは相手も一緒。むしろ体のダメージが大きい田中イズナの方がよっぽど不利を感じているはずだ。
(ダメージが残っているうちに……! ダメージが残っているうちに……!)
攻め落とすしかない。私の頭には、そのことしかなかった。