空中戦 その1
背骨からのポキポキ音が止まらん
飛び立って自分に接近してくる相手をただ眺めているわけもなく、田中イズナは向かってくる私に対し、剣を無数に形成し、宙に浮かせて発射する。
ただその動きはとても直線的で読みやすい。熟練の兵士なら容易に避けられる。
当然私も問題なく剣の雨を回避しつつ、田中イズナが佇む天に登っていく。
「ちっ……盾結界!」
田中イズナは舌打ちをした後、剣結界は私に効果がないと踏んだのか、結界を一旦消し、剣から盾に切り替えてきた。
盾結界はさっきの剣結界の盾バージョンと言った感じで、盾をどこからともなく生み出し、自由自在に操れるというものだ。
しかし、さっきまでの剣とは違い、盾一つ一つが横に広いため、オーラととても相性が悪く、発動されたらほぼ詰みな私にとって激ヤバな技。
(でも、今の私にはフラッシュナックルがある!)
いくらでも盾を作れると言えど、その素材はすべて鉄製で統一されていて、そこまで硬くはない。フラッシュナックルさえあれば余裕で盾を貫通し、本体へダメージを与えることができるだろう。
「ふんっ!」
その証明に、生み出した盾にフラッシュナックルを叩き込んだ所、木っ端微塵に破壊できた。
(よしっ! 通用する!)
私と田中イズナの間に距離があったため、本体にダメージを与えることはできなかったが、盾を破壊できることは確認できた。
フラッシュナックルがある! と心の中でタカを括ってはいたが、正直直前まで通用するかどうか不安だった。
もしかしたら盾を破壊できないかもしれないと頭の隅で少し思っていたからだ。
しかし、それが解消された今、怖いものなどもう何もない。ただ突っ込み、壊すだけだ。
――――
(意外に戦えるな……だけど……)
私、田中イズナは最初の楽勝だろうと言う予想に反し、序盤で光弾とラッシュコンボによるダメージで早々に追い詰められていた。
単純に言えば油断していたのだ。
我が兄との訓練により、いくばくかの強化が成されているのは予想ができていたが、まさかここまでのものとは思わなかった。全てが終わったらぜひ私も訓練を受けてみたいものだ。
(さて……と……)
普通なら焦ってしまう展開だが、私の脳内に与えられたダメージに反し、以外と頭の中は冷静だった。
(じゃ……時間をかけますか……)
理由はこれまでの戦いの中で、対戦相手である浅間先輩の弱点を発見したからである。
結界を入れ替えた理由は剣結界の相性が悪かっただけではない。もう一つ、浅間先輩の弱点を浅間先輩自身に自覚させないようにするためでもある。
要するにできるだけ長い間、弱点を露出させるための盾なのだ。
そして私の思惑通り、浅間先輩は私と同じ高度までたどり着くと、その身にあるオーラを存分に使い、盾を破壊し始める。
盾を破壊している時の顔はポーカーフェイスもクソもなく、焦りと高揚が混じったような顔をしていた。
(想定通り……だけど……)
ちゃんと仕掛けを施したとは言え、浅間先輩が気づくか気づかないかはコントロールできない。完全に浅間先輩の心境頼りになってしまう。
(悪いけど完全じゃないことには不安になっちゃう性格なんだよね……!)
すぐに気づかれてしまった時のため、二の矢を用意しておこう。
全ては愛する家族を取り戻すために。