情報バトル
剣結界で生み出された剣を木っ端微塵に破壊した後、私はその隙をついて体をさらに一歩踏み出し、田中イズナの顔面にもう片方のオーラの入っていない拳を叩き込んだ。
すべては情報の差。常日頃からこの戦いのために情報を集めていたあの頃の私が生み出した明確な有利だった。
(まだだ!)
そしてこんな大チャンス、逃さない理由はない。
田中イズナは今、顔面にパンチを食らい、頭だけが大きくのけぞっている。視界もぐらつき、僅かに見えるのは青空だけとなっていることだろう。
もしオーラの貯まった拳で殴っていたとしたら、頭だけのけぞった状態にならず、体ごとステージの角まで吹っ飛んでいた。
(あえてなんですよね!)
オーラを拳に乗せず攻撃した理由はそれだった。このチャンスをパンチ一発のみのダメージにとどめず、さらにダメージを稼ぐためにあえてオーラを使わなかったのだ。
「お腹が……お留守ですよっ!」
私は頭を吹っ飛ばした勢いのまま、体と体の距離をさらに縮め、できるだけ後ろに飛ばさないようにしつつ、みぞおちに一撃叩き込む。
「ぐげふ……」
さすがの田中イズナもこの一撃は響いたのか、顔を天空に向けたまま、女性とは思えない低い声が溢れる。田中イズナファンとしては役得なのだろうが、ファンでも何でもない同性の私からすれば、ただのキモいくぐもった声だ。
しかしそれだけにとどまらず、オーラを込めた両拳のラッシュをノーガードの体に何度も打ち込む。
「だっっらぁ!!」
最後に、一番力を込めた拳を落ちてきた顔面に打ち込んだ。
「そんでこれも……」
しかし、それは拳で与えたダメージが最後と言うだけで、与えるダメージがこれで最後と言うわけではない。
私は両足を地面に突き刺し、いつものオーラナックルの姿勢を取る。
「げほっ……!! それは攻略済みだよ!!」
田中イズナは剣を大量に生み出して、私と田中イズナの間に剣の壁を設置した。
無論、オーラの弱点は田中イズナに把握されている。盾結界は位置的に使用する前に攻撃がヒットしてしまう。そのため、剣を壁に見立てて設置したと言ったところか。
(オーラナックルなら有効ですよ……もちろん……ですが……)
私の右拳はいつもとは違い、空気中から"なにか"を吸い上げ、眩い光を放ち始める。
その光は次第に強くなり、十分になるまで蓄えていく。
今からやるのはただのオーラナックルではない。彼のアイデアを元に、何度も何度も工夫を重ね、やっとこさ完成した新必殺技。
「おまけです!!!!」
(フラッシュナックルだぁ!)
拳から、光り輝く光弾を発射した。
それは剣の壁を突き破っても、勢いを止めることなく前へ進み……
「……は?」
田中イズナの口からこぼれた素頓狂な声とともに、光弾は田中イズナへと、ものの見事に直撃した。




