達観
本編の前に1つご報告を。
今回、投稿が遅れてしまい、すいませんでした!
実は休日に入ってから、重めの風邪になってしまい、寝込んでいて投稿できませんでした。
まだしんどいので、今週も2話、よくて3話位の投稿しかできなくなってしまうと思います。
ですが、この風邪が治ったらすぐにでも執筆を再開しますので、どうか応援よろしくお願いします。
ほんとに! ほんとによろしくお願いします!!
それでは本編どぞー
その後、私と凛、そしてイズナは、田中伸太の正体を暴くため、黒のポーンである浅間ひよりとどうやって引き剥がすか相談を始めた。
相談、とは言っても、プロモーション戦が間近に迫り、その準備で忙しかったため、ほとんどがイズナ持ち込みの作戦になってしまったが。
私がしたことといえば、イズナが作った作戦を確認し、粗があるところを指摘したり、少しアドバイスをした程度である。
例えば、イズナの予定ではイズナVS浅間ひよりのマッチアップを作るために、研究員たちに賄賂を送る予定だったが、私が介入したことにより、研究員たちに事情を話して研究員自身に細工をさせることになったり、試合前に浅間ひよりと遭遇したら、自分を少しでも意識させるためにふっかけたりした方がいいと言っておいた。そのくらいである。
ただ、ここまでの理由と証拠を提示されたとしても、黒のポーンの家庭事情と黒のクイーンの個人的な疑いだけで、一大イベントであるプロモーション戦を動かしていいのか、そう考える人が多いだろう。
しかし、実際に田中イズナと会った私だからこそ、田中イズナの本気度が伝わってきた。
(……あの時のイズナは、本気の目をしていた)
本気の本気で、自分の兄を取り戻そうと言う覚悟が、目から感じられた。
その時、私は確信したのだ。この話に乗っておかないと、後々後悔することになってしまうと。
人なんてそんなものだ。どんなタイミングであろうと、どんなに現実的でないとわかっていても、理論的に計算して出した結論と同じ、もしくはそれ以上に直感に従ってしまう生き物なのだ。
実際、それで成功した人は数知れない。
しかし、それと同じ位、自分の直感で大失敗した人もいる。結局のところ博打なのである。
それでも私はイズナが、物事を良い方向に進めてくれる。そう感じてやまなかった。
(私は……あなたに賭けてるのよ。イズナ)
今なおステージ上に立ち、戦っている田中イズナを私は特設席から見つめ続けた。
――――
袖女視点
「いっきますよー!!」
私は早速、頭より後ろに両腕を下げた状態から、右腕を田中イズナに向けて発射するため、腰を曲げ、右腕をさらに後ろへ引き伸ばし、発射体制に入った。
無論、チェス隊である田中イズナが、こんなまる見え……今から攻撃しますよと伝えようとしていると感じるほどの雑な動きに反応しないわけがない。
田中イズナはすぐさま体を左右に振り、的をこちらに絞らせないようにする。
……と、思われたのだが……
(……動きませんか)
私の攻撃フォームを見て、彼女がとった行動はまさかの不動。鎮座。あたかもそこにいるのが当たり前かのように、余裕の表情を崩さずその間に仁王立ちした。
「お、おい……」
「なんだありゃあ……」
観客席からちらほらと動揺した言葉が聞こえるが、それも無理はない。今田中イズナがとっている行動は、戦闘を少しでもかじっている者からすればありえない行動だからだ。
基本、対戦相手の攻撃を、手や腕の動きから予測できた場合、即座にどこに着弾するかを計算して、その場から逃げようとするだろう。
しかし、この行動を起こせるのはロボットのみ……少なくとも、人間では絶対に取れない行動である。
と言うのも、人間にだってそれくらいの予測はできる。それを行動に移せるか移せないかはともかく、少し地頭が良い人間なら、相手の攻撃フォームから攻撃の着弾位置を計算するなどわけないことだ。
ただ、しかし、人間は良くか悪くか、攻撃の着弾位置を特定して、その場から離れようとした時、もう一つ、ある種の懸念が生まれてしまうのだ。
それは……
"もし、この予測が外れてしまっていたら?"