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 田中イズナの腫れはもともとそこまでひどいものではなかったこともあり、ものの数分で完治した。


 私と凛は田中イズナの手首が完治したことを確認すると、田中イズナの座るソファの向かい側のソファに座り込んだ。


「それで……話してくれるかしら? あなたの兄のことを」


 手首が治ったのですぐに本題に入る。それはもちろん、さっきの私の兄宣言だ。


 廊下で放った兄宣言が真実なら、田中イズナを情報口に、田中伸太の過去を余すところなく知ることができる。


 あれほど東京派閥内の情報をしらみ潰しに探り、あれだけ姿勢を悪くしてパソコンと何時間も向かい合って、それでも入手できなかった超貴重な情報が、ものの数10分で手に入るかもしれない。そう考えるだけで、心の中でぴょこぴょことはしゃぐ自分がいるのが分かった。


 よく考えてみれば、田中イズナと田中伸太には共通点が多い。


 同じ東京派閥の出なのに加えて、苗字はどちらも田中である。それに加え、神奈川兵士への入隊時期も差はたったの1ヵ月しか変わらない。むしろなんで今まで気づかなかったのかと自分に問いかけたいほど共通点があった。


 もちろん嘘の可能性も考えたが、チェス隊である田中イズナがわざわざ嘘をついて私の機嫌を損ねるとは考えづらい。


(よって、田中イズナは私に嘘をついていない可能性が限りなく高い……! もし嘘をつくような愚者だったとしても、問い詰めれば何かボロを出すかもしれない)


 ここまで、田中イズナが嘘をつく可能性のなさについて追求してきたが、ぶっちゃけどちらにしろ、私にデメリットが起こることは無い。うれしい二択と言うやつだ。


 私が身構えていると、少ししてついに田中イズナの口がゆっくりと開き始めた。


「さっきも言った通り、私の兄は田中伸太なのですが……」


「その話は廊下で聞いた。私と斉藤様が知りたいのはその言葉の信憑性だ。その言葉が信頼に値すると言う理由を見せなさい」


 黒のルークである凛の口から、容赦のない一言が放たれる。その威圧感に田中イズナは気圧されたらしく、言葉を続けようとした口を塞いでしまった。


「凛、言い過ぎよ」


「ハッ、申し訳ございません」


 このままだと議論が進まないと考えた私は、すぐさま凛に注意喚起を送る。スムーズな話し合いには、物腰柔らかい態度が1番だからだ。


 私の注意喚起を聞いて少し落ち着いたのか、一呼吸置いた後、ゆっくりと田中イズナは言葉を溢し始めた。


「……さっきも言った通り、私は本当に田中伸太の妹です。でも、それだけでは信用ならない……ので、これを持ってきました」


 そう言うと、田中イズナは隊服のポケットから何かの紙切れのようなものを取り出し、私と田中イズナの間にある机に、裏向きにしてソッと置いた。


「これは……?」


 私が問いかけると、田中イズナは待ってましたと言わんばかりに、すぐさま口を開き、質問に対する返答を答えた。


「私たち……田中家の家族写真です」

 

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