最中
ブックマーク900件突破!! ありがとうございまああぁぁぁぁす!!!!
まさかここまでいけるとは……! 何度でも言いますが、ここまできたのは読者の皆様の応援のおかげです!! ありがとうございます!!
そしてこれからも、『底辺男のミセカタ』の応援をよろしくお願いします!!
黒のクイーン視点
(ふふ……)
私はチェス隊メンバー専用の特設席に座りながら、下のステージで行われている田中イズナ対浅間ひよりの戦いを眺めていた。
観客席や私以外のチェス隊メンバーは、浅間ひよりが取った特殊な構えに驚きをあらわにしているようだったが、この私には驚きや動揺といった予想外の感情はない。
なぜなら、この戦いは田中イズナ……もう私たちは仲間なのだから、これからはイズナと呼ぶとしよう。イズナが私に提案して作り上げたステージなのだから。
時はそう、田中伸太との対談が終わった後に遡る……
――――
凛に田中伸太は黒ジャケットなのかもしれないと言う疑いがあることを話した私は、凛とともに執務室に移動し、作戦会議をしようとしていた。
「あの! 少しお時間よろしいでしょうか!」
作戦会議をしようと、相談室へのドアを背に2人で歩き出そうとしたその時、ちょうど後ろから若々しい女性の声が、私の足をピタリと止めた。
「……ん? あなたは……」
そこにいたのは、白い髪が特徴的な子。同盟会議以前に神奈川派閥に在住していた者なら、知らぬ人はいないであろう若きスーパールーキー。
彼女はハッと何かに気づいたように表情を変化させると、姿勢を正し、敬礼の姿勢を取り、自己紹介を始めた。
「申し遅れました! 白のポーン、田中イズナと申します!」
神奈川兵士になってから、1ヵ月という短い期間でチェス隊にまで上り詰めた天才、田中イズナが現れた。
「そう……で 何か用?」
彼女が私に話しかけることは、さほど珍しいことではない。もともと田中イズナは人懐っこい性格だし、そのせいか私も何回か食事に誘われたことがあったからだ。
(残念ながら用事があったから、その時は誘いに応じなかったけど……)
「はい! 少し相談したいことがあって……」
「斉藤様はこれから私と共にやることがあります。あなたの相談を聞いている場合ではないのです。すぐにお引き取りください」
田中イズナのお願いを、私の横にいた凛が無慈悲に却下する。
(少し言い方は厳しいけど……凛の言う通りなのよね)
言い方は少し厳しいが、凛の言う通り、私にはなさねばならない指名がある。少し前ならまだしも、これから忙しくなるタイミングである今だけは、了承することができなかった。
私自身、断ることが得意な性格ではないため、こういう時にビシッと断りの言葉を入れてくれる凛の存在は、とてもありがたいものだった。
「ごめんなさいね。また後で、話は聞いてあげるから」
私はそれだけを言い残し、再び相談室へのドア側の廊下を背にし、執務室へ歩き出した。
「私は……私は田中伸太の妹です!!」
……が、一切の脈絡なく放たれたその言葉は、私の足を止めるには十分な威力を持っていた。