表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

493/783

期待はずれ

 ちょっと文字数増量!

 勝たなくていい。勝たなくていいから、せめて白のクイーンのスキルだけは引き出してくれと、対戦相手である黒のポーンの兵士に期待を寄せていた俺だが、その願いむなしく、白のクイーンのダンスバトルにものの見事に振り回されたまま、30分が経過してしまった。


 結果はもちろん、白のクイーンの判定勝ち。もっとも誰がなんと言おうと、勝敗はわかっていたのだが、まさか判定勝負になるまでダンスバトルの姿勢を貫くとは思っていなかった。


 さぁ、第6試合も終わったし、次の試合が始まるか! ……と思われたその時、通常、司会者の声しか流れないはずのスピーカーから、別の機械的な音声が流れてきた。


『全16試合の内、6試合が終了したため、ここで一旦、10分間の休憩を挟みます。もし何かあった場合、すぐさま職員の方に声をおかけください。繰り返します。全16試合の内、6試合が終了したため――――』


 スピーカーから流れてきたのは、10分休憩のアナウンス。どうやらプロモーション戦、本戦は全試合中5分の1が終了するたびに10分間の休憩を挟むらしい。


(つまり、6試合目、12試合目終了後に毎回休むってことか……めんどくせぇ〜)


 袖女の試合さえ見れればそれでいい自分としては、計20分もプロモーション戦に関係のない時間が生まれるのは苦痛以外の何物でもなかった。


 ぜひともこのままぶっ続けで続行してほしい。そんな思いが俺の心の中で渦巻く。


 しかし、俺1人のそんな思いがアナウンスに届くわけもなく、10分間の休みが設けられ、観客席に座った観客たちが、トイレ休憩や、出店の食べ物を買いに行くためだろう。ぞろぞろと動き始めた。


 そのようすはまるでアリの巣。見る人が見れば気持ち悪く感じてしまうことだろう。しかし残念、俺は集合体を見て怖がる体質ではなかった。むしろ、これから20分間も暇な時間ができてしまうことに、思わずため息をついてしまった。


「ふぅ……」


 結局、白のクイーンはスキルの影のかけらも見せぬまま、試合は終了してしまった。


 それに対し、俺は……


「はぁ〜……マジ……?」


 白のクイーンのあまりのレベルの高さに、軽い絶望感を覚えていた。


(レベル高すぎだろあれ……スキル使ってる相手にスキル使わずに勝つとかどんな身体能力してんだよ……)


 筋肉がつきづらい俺の体では、絶対に不可能であろう芸当。


 普通の兵士くらいだったらわからなくもないが、チェス隊相手にとなると……


「……しかもスキルが残ってる」


 あの身体能力にスキルが加わるとなると、一体どれだけの単体戦闘能力が備わっているのか、予想すればするほど予想がつかない。


(もしかしたら、桃鈴才華以上の……)


 俺はそこまで考えた後、ブンブンと首を振り、硬城蒼華のことについての思考を放棄する。


 相手を評価するのは弱者がするあるあるだ。相手を評価し、自分を卑下してしまう。


 戦う者が強い者を見た時、真にするべき思考は『相手がどれくらい強いか』ではなく『強い相手にいかに勝つか』なのだ。


 相手が強いのは百も承知。相手が強いから勝てないで自分の弱さから目を背けてはならない。相手が強いのは"前提"だ。その上で勝つ方法を見出さなければならない。


(今の俺で白のクイーンに勝つのは"難しい"……不可能ではない……多分)


 それでも力の差は圧倒的だ。正攻法では勝てない。


 不意をついて、汚いことしまくって不可能ではないと言う意味だ。それでも1パーセントくらい勝率があるかないかぐらいだが。


(……いや、1パーセントもあるか……?)


 俺がうんうんと唸りながら頭をぐるぐる回していると、テレビ画面から司会者のアナウンスが耳に入った。


『10分間の休憩も終わりましたし、次に参りましょう! 第7試合!!』


「……お」


(そういや……袖女の試合は第7試合だったな)


 俺がわざわざ会場まで足を運んだ理由。袖女のプロモーション戦が、いつの間にか始まろうとしていた


「……え? てか俺、10分間も考えてたの?」


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ