第1試合 黒のクイーンVS白のビショップ
どうぞー
『では皆さん! 準備はよろしいでしょうか!!』
わたくしが過去に意識を飛ばしている最中、プロモーション戦を取り仕切っている司会者によって、本戦の説明がなされた。
ルールは30分間の時間制。その間に片方が気絶する。戦闘不能になるほどのダメージを受ける。降参を宣言する。この3つのいずれかが起こった場合、即座に相手側が勝利となる。
30分間、この3つの条件のいずれにも当てはまらず、勝者が現れなかった場合、大臣たちの厳正な審査によって、どちらの方が有利だったかで勝者が決定される。
(……はいっ。もう過去にふけるのは終わりですわ)
わたくしは気持ちを切り替え、過去の自分ではなく、今現在の自分に意識を戻し、気持ちを通常モードから戦闘モードに切り替える。
狙うは格上、目指すは勝利。いつも優雅に勝利を手に入れてきたわたくしだが、今回ばかりは優雅だとか、可憐だとかしのごの言ってられない。
今だけは……
(泥臭くても……勝利が欲しい!!)
『試合っ……開始しいいィィィィィィー!!!!』
司会者の叫びと、試合開始のゴングが鳴り響いた瞬間、わたくしは力の方向の能力を発動。
足を強く踏み込み、スキルに攻撃だと判断させ、その力を斉藤様に向けて受け流す。
受け流された衝撃はわたくしのスキルに従い、ステージ上に亀裂を作りながら発射される。
いくら斉藤様のスキルが強力で、一瞬で決着をつけられるほどのチート能力であろうと、その前に自分の身に危険が迫れば、自分の身を守るためにスキルを使わざるを得ない。
地面の亀裂は人が思っている以上に早い!!
斉藤様がスキルを発動する前に、こちらの攻撃を先に入れ、斉藤様が自身の身を守るためにスキルを活動している間に、次の攻撃の準備……一撃必殺で、この試合を決めるほどの攻撃の準備を進めれば、勝ち筋は十分にある。
そして、斉藤様に向かっていった地面の亀裂は、ついに斉藤様の足元まで到達し……
斉藤様がボソリと何かの言葉をこぼしたのを聞き取った瞬間、わたくしは意識を落とした。
「ごめんなさいねぇ……あなたに付き合ってあげたいけど……私にもいろいろあるの」