選出
伸太と神奈川兵士の現状を話し合い別れてから、僕は出入り口の壁に設置されている関係者専用のドアの先に進み、今なお、全ての大臣に加え、キングとクイーンが集まって、本戦に進出する兵士を決めている場である相談室に腰を下ろしていた。
「そんな目立たないスキルの子じゃなくて、彼女にすべきですよ! 範囲も広くて威力も高い! 彼女を選ばない理由はないでしょ!」
「彼女もいいですが、この子もすばらしいんじゃないですか? 旋木天子と同じ風を使うスキルということもあるし、次代の旋木天子と話題になる可能性もあるかと……!」
大臣たちの選出、とその言葉だけを見ると、とてつもなく厳正な場のように聞こえるが、実際のところ、そんなことはなく、大臣という大層な肩書きをつけただけの女性たちがやいのやいのと騒ぐだけの場であった。
キングとクイーンにも発言の権利自体はあるが、人選の結果を決めるのは最終的に大臣たちだ。僕たち4人はほとんどそこにいるだけに過ぎない。警備員と何も変わらない。
(全く……何もわかっちゃいない……)
大臣たちのあまりにも的外れすぎる発言の数々に、僕は見えないところで頭を抱える。何が範囲も広くて威力も高いだ。僕も見ていたが、あれはただそう見えているだけに過ぎない。もしあれがさらに4分以上続いていれば、燃料切れでガス欠を起こしてしまっていたことだろう。
「…………」
「…………」
「…………」
さっきから、僕を含めて白のキング、黒のクイーン、白のクイーンは何もしゃべらない。僕と同じく、この相談には介入する意味がないとわかっているのだろう。
(そもそも伸太なら、あんなやつ秒殺で……)
「……山様!」
(……ふふ、違うな。秒殺ところじゃない。伸太なら瞬殺で……)
「……丸山様!!」
「……あ?」
耳から入ってきたその声に、自然と明後日の方向を向いていた目線を声の方向へと向ける。
「大丈夫ですか? どこか上の空だったようですが……」
そこにいたのは、大臣たちの1人である異能大臣。みたところ、何回か僕に声をかけたが、反応がなかったらしい。
「ああ……すまない。考えごとをしていた……何か聞きたいことでもあるのか?」
反応しなかったことを素直に謝罪し、改めて何が聞きたいのか異能大臣に問いかける。
異能大臣はやっと気づいてもらえたことに喜んでいるのか、歳にしては可愛らしい顔を破顔させ、言葉をこちらに放ってきた。
「丸山様なら誰を推薦するかなと……! やっぱりこの子ですよね!?」
「え? いや……」
正直言って、大臣たちが推薦してくる兵士たちはどれもこれもよくないものだらけだ。
「別になんでも……」
『引きずり下ろされるんだ』
別に何でも構わない。そう言おうとしたその時、観客席で言われたその言葉が、放たれたはずの言葉を喉奥でピタリと止まった。
(そうだ……)
俺は今、王なのだ。僕の求める王ではないが、少なくとも、あいつにとっては今の僕は王なのだ。
であれば……
(やつに引きずり下ろされるまでは……)
王らしく、在るとしよう。
「僕は……こいつがいい」
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