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 問いかけに対して、雑と答えると、黒のキングは頭を抱え、視線を下に落とし、ハァとため息をついた。


「ハァ……やっぱりそう思うか?」


 俺の答えに黒のキングも思うところがあるのか、明らかに落ち込んだ姿勢をとってくる。しかし、だからといってフォローする理由はないので、淡々とその答えに対する追求の言葉を述べる。


「ああ、スキルの使い方があまりにも雑すぎる。使い所とかそういう考え方が足りない……ってか、ないんだろうな。第1種目のスーパードッチボールなんて、投げるタイミングとキャッチするタイミング以外でもスキル垂れ流しなのはびっくりしたぞ。あまりにもアホすぎて」


「だよなぁ……」


「……なんでこんなことになってる?」


 そして俺は、いまだに項垂れる黒のキングに、なぜこんなことになっているのか問いかけた。


「……単純な兵士の質の低下もあるが……何よりも、チェス隊の影響が大きい」


「チェス隊の影響?」


「ああ、数年前、大臣が全員一気に変わった時から方針が変わってな……それより前は、たいした実績がなくても、日々の貢献度や裏方で支えている仕事量次第で順位アップ……チェス隊への繰り上がりもあったのだが……」


「今の大臣たちは、それを認めないわけか」


「……今の大臣たちはコツコツと頑張っている兵士たちを一切評価せず、順位が上がっていくスピードや、一度の大きな実績だけで一気にチェス隊へ昇格させるようになって……おかげでチェス隊の面々は派手で火力の高いだけの兵士ばかりになっていった。その下にいる兵士たちも、それを見て、連携やテクニックよりも、個人の実力や威力の高さ、派手さを重視するようになった……結果がこれだ」


 そう言い、黒のキングはステージ上にいる兵士の1人を指差した。その指の先の兵士を見ると、その兵士は常に炎の嵐を見にまとい、周囲にばらまくように炎を飛ばしていた。


「……なるほど」


「引き際も何もわかっちゃいない。ただスキルをばら撒くだけ。せっかく前大臣の頃から勤務していた審査員たちが厳正な結果を提出しても、今の大臣たちがそれを簡単に却下する……おそらくだが、あいつは本戦に上がるだろうな」


 上層部の腐敗は東京派閥でも見受けられたため、東京派閥と同じく、全盛期と比べれば明らかに劣化している神奈川派閥にも、ある程度の腐敗は起きているだろうなと高を括っていたが、まさか審査結果を権力で捻じ曲げるほど腐りきっているとは。そんなものが報道陣にバレれば、ネットは間違いなく炎上するだろう。


「師匠だって黒のキングだろ? 何とかできないのか?」


「キングと言う役職には確かに権力はある。だが、チェス隊の域を出ることは無い。チェス隊のメンバーを、同じチェス隊が決めるのは許されていない」


「……ま、そりゃそうか」


 チェス隊の人間がメンバーを決めること……それができてしまえば、身内びいきが簡単にできてしまうから。


「でも、なぜ俺にそんなことを言う? それを言われたところで、チェス隊でも何でもない俺にできることなんて、師匠以上にないぞ?」


 そう言った後、黒のキングは間髪入れずに俺の方に視線を振り向いて一言、この言葉を放った。


「そう。不可能なんだ。だから……」





「今年のプロモーション戦が終わったら、僕たち2人はキングを引退する」

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