肉体の鼓動
昨日は投稿できずすみません。正月に備えて書きだめしておりました。
途中で書かなくなることは無いので、ご安心を……!!
では続きをどうぞ!
プロモーション戦第3種目の途中、隣から聞こえた声の主は、いつの間にか隣の席に座り込んできた師匠こと黒のキングだった。
「ふむ。なぜ来たかか……お前の状態を確認しておきたかったから……かな?」
俺の問いかけにそう答えると、黒のキングはアゴに手を当て、じっくりと、俺の肉体を舐め回すように見つめ始める。
(うえ……気持ち悪……)
体が入れ替わっていた時も言った気がするが、俺はそっちの趣味はない。何なら腹の部分がへこんでいて、胸が腹とは対照的にボンと膨らんでいる女が大好きなぐらいだ。胸のない男に興味はない。
そんな男、しかも老人と言えるレベルに老けた黒のキングに舐め回されるように見つめられるのは、正直言って不愉快だった。
「そこまで嫌な顔をするな。何、昨日押したツボの効果が出ているかなと思って確認しに来ただけだ。そっちの気は僕にもないぞ」
(ツボ……? ああ、昨日のあれか……)
黒のキングの言っているツボというのは、おそらく昨日の訓練の後のみぞおちへの一撃のことだろう。
だが、ためしに体に変化が起きているか、腕や腹などを自分で見て確認するが、睡眠で疲れが取れているだけで、昨日と比べて大した変化は見られない。
(ん……? 別に何も……)
こちらの思考を読んだような発言をした後、黒のキングはひとしきり確認し終えたのか、俺の肉体から視線を外し、俺の瞳に視線を戻した。
「見たところ、まだ体に変化は起きていないようだな」
俺の体を確認したので、ここから離れるかと思ったのだが、黒のキングは俺の予想に反して、ここにとどまり始めた。
(……あぁ?)
「どうした師匠? 他に何か聞きたいことがあるのか?」
そう尋ねると、黒のキングは30秒ほど第3種目が行われているステージの真ん中を見つめた後、こちらに振り向いて一言、ぼそりとつぶやくように話しかけてきた。
「……お前は、これを見てどう思った?」
(ああ、そういうことか)
師匠こと、黒のキングが俺の隣の席にいつの間にか座り、話しかけてきた理由。それには先に言っていたように、ツボを押したことによる体の変化を確認するため……それも確かにあるだろう。
しかし、理由はそれだけではない。もう一つ、黒のキングには明確な理由があったのだ。
それは……黒のキング以外の実力者から見た神奈川兵士の感想。
もちろんチェス隊の誰かに話を聞くという選択肢もあるが、キングなんて大きな立場にいる人間から話しかけられたら、普通の感性を持ってる人間は萎縮して肯定的な発言しかしないだろう。それは2人のキングが1番よくわかっているはずだ。
だからこそ、何日も何日もかけてともに訓練し、お互いの人柄をある程度理解し合ってきた俺にこの質問を投げかけてきたと言うことだ。
なら、問い掛けられた側であるこちらの役目は、その質問に正直に答えることである。
「あー……」
俺は一度吐息を吐いた後、喉に引っかかった言葉を無理矢理吐き出すように、自然と口を動かした。
「雑……だな。全体的に」