表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

472/783

何を……

 朝ご飯食べない派になってきた

 田中伸太が出店をめぐりまくり、むしゃむしゃと食べ物にパクついている頃……


 私、浅間ひよりは対戦候補の1人である田中イズナと廊下でばったり出会っていた。


「どうも……田中イズナ」


「おはようございます。先輩!」


(……あ?)


「これからどこに行くんですか? まだチェス隊の皆さんは待合室に来ていませんよ?」


「あ? いや……たいして予定もないので、早めに持ち場についておこうと思いまして」


「そうでしたか! でも、プロモーション戦までまだ2時間以上ありますし……あっ! 一緒に出店回りでもどうですか?」


(こいつ……最初と態度が……)


 私の知る田中イズナは、元気で明るい快活少女で、誰にでも明るく接するクラスで人気の女の子といったイメージだった。


 しかしどうだ。田中イズナは最初、私を注意深く観察するように、数段、言葉のトーンが落ちていた。まるでこちらを警戒するかのように、疑義の視線を向けながら。


 ただ、次の言葉からそれを修正するかのように、私が知る田中イズナの声のトーンに戻った。


「……いえ、ほぼ初対面の相手と一緒に出店を回れるほど、私は肝が座っておりませんので」


「そうですか! 残念です……じゃあ、私はそろそろ失礼します! 後、私のことは名前だけで呼んで構いませんよ! それじゃあ!」


 そしてそのテンションのまま、最初の不気味な感じは鳴りを潜め、私が歩いてきた廊下へと姿をくらませていった。


「一体何が……ん?」


 田中イズナの態度に不自然な違和感を感じていた私だったが、田中イズナが私の後ろの廊下に消えてから、もう一つ、不自然なことに気がついた。


(……何で、田中イズナがこんな時間にここへ?)


 田中イズナは持ち前のコミニケーション能力と、明るい雰囲気でごまかしてはいるものの、チェス隊からすれば、まだまだ新参者の領域を出ない。順位的にも私と同じく、最下層のポーンである。


 プロモーション戦を準備する役職についたのならまだわかるが、先に言ったように、神奈川派閥では新参者かつ、最下層のポーンである田中イズナが上層部にプロモーション戦という大事な場を管理するのを許してもらえるとは到底思えない。というか無理だ。


(だったらなぜこんなに早く……?)


 私のように心を落ち着かせたいからかとも考えたが、彼女のことだし、誰かから出店を回ろうと誘われている可能性が高い。それに、そもそもプロモーション戦の準備を本当に任されているのなら、プロモーション戦2時間前にここを出るのも変な話だ。


「何か狙いが……?」


(杞憂だと言いんですが……)


 ここで考えても何もわからないため、私は一旦思考を放棄し、自分の待合室へと足を進めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ