むしゃむしゃ
俺は人混みをかき分け、ステージから外に出ると、行く途中に気になっていた出店へ足を運んだ。
「おおー!」
そこには出店には鉄板と言えるたこ焼きやお好み焼き、焼きそばにイカ焼きと、既にマンネリ化していながら、ついつい買ってしまう食べ物を取り扱っている出店が揃っていた。
こういうお祭りごとは東一の文化祭でも経験したが、あの時と比べて人混みの密度が少し低い気がする。
おそらくだが、みんなが見たいメインイベントがプロモーション戦に集中しているため、今の時間から自分の席をとって準備している人が多いのだろう。
どっちにしろ、人混みが少ないのはこちらにとって好都合。今のうちに欲しいものは全て購入してしまおう。
そう思い立った俺は、食べたいと思った食べ物を取り扱っている出店を片っ端から巡り、歩きながらパクつき始めた。
(んん〜……焼きそばは安定のうまさだな……! お? あれはベビーカステラ……? うまそうだ! 買おう!)
気づけば、食べ歩きしながらおいしそうな食べ物があったら買う。買ったものを食べながら良さそうなものがあったらまた買う。という無限ループに突入。そもそも俺自体、かなり食べるタイプだったので、この無限ループはまさに天国。袖女がいなければ、プロモーション戦なんてほっぽりだして、ずっとこの出店がある地帯にうろつきまわっていたことだろう。
しかし、今の俺には袖女のプロモーション戦を観戦するという大事な用事……いや、別にやらなくてもいいが、後々袖女が拗ねるのが目に見えているので、やらなくてはならない用事があるので、いつまでもこの無限ループを体感してはいられない。
プロモーション戦まで、どのくらい時間があるのかを確認するため、スマホを開き、今の時間をチェックする。
(今は午前10時……プロモーション戦は昼の12時すぎに始まるらしいから……あと2時間か……)
まだまだ楽しめるじゃねーか……!!
「ブラック! ここにある出店を制覇するぞ!!」
「ワン!!」
そうブラックに呼びかけると、手に持ったベビーカステラを口に含んだ。