プロモーション戦 開幕
始まったああああああ!!!!
黒のキングとの訓練を終えた後、俺は何の変化もなく、袖女の作った夜ご飯を食べ終え、床につき、睡眠を貪っていた。
「んむ……」
しかし、睡眠という楽園の時間は永遠に続くわけがなく、耳障りな音とともに、まぶたがゆっくりと開かれていく。
「ん……んあー……」
いつもは袖女に起こしてもらっている俺、田中伸太だが、その日だけはなぜか自分から起床した。
しかし、睡眠を貪って貪って、貪り尽くした結果起きたような清々しい気分ではない。むしろ袖女に起こされた時よりも目覚めが悪く、さあ今日という一日を使って思う存分体を動かそうという気持ちより、ああ、まだ眠っていたいなという気持ちの方が先に脳内を襲ってくる。学校がある朝のあの感じに近い。
(何時だ……?)
時刻を確認するため、手元にあったスマホの液晶を見るとなんと時刻はまだ午前7時。社会人でもまだ眠っていそうな時間帯だ。
さすがの俺でもこの時間の起床はありえない。となると……
(あー……この音か)
視覚的な変化は無いが、唯一、閉じている窓から漏れて出てくる人の声がいくつも重なったような騒音は、俺の耳に確かに届いていた。
おそらく……違うな。間違いなく、この騒音が自分の催眠を妨げる要因となったのだろう。
「うっぜ……」
「あら? 今日は早起きなんですね」
ぼそりとそう言葉をこぼすと、ソファの奥から袖女が顔を出してきた。
「ああ、その窓の奥から聞こえる騒音のおかげでな」
すると、袖女も苦笑いし、俺に言葉を投げかけてくる。
「ああ……今日はプロモーション戦当日ですからね。神奈川中がお祭り騒ぎになってますよ」
「まるで祭りだな……」
「実際、祭りのようなものですから」
俺は袖女と喋りつつ、ソファから頭を起こす。寝たい欲望から遠ざかっていく感じがして、少しの喪失感を覚えるが、起きてしまったものは仕方がない。そういう日なのだと受け入れよう。
袖女は俺が起き上がったのを確認すると、ソファから体を離し、キッチンに戻っていく。キッチンからジュージューと何かを焼く音が聞こえていることから、まだ朝ご飯を作っている途中だとわかる。
「あー……」
「もう少し待っててください。もうすぐできますから」
俺にとっても、袖女にとっても、これからの人生を決める1日が、今始まる。
「ワン……」
「お……お前も起きたか」
――――
同時刻、とある1室では。
「……ついに始まったわね……手はず通りになってる?」
「はい!対戦カードの抽選機には、ご命令通り細工を……」
「そう……ねぇ、あなた。本当にできるのね?」
「……ええ、お任せを……」
「兄は、私が確実に連れ戻します」
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