せめて一撃
書いていこうかぁ!!!!
俺は壁に激突した瞬間、体をぐりんとしならせ、壁にめり込んだ体を外へと脱出することに成功した後、そのまま体を前に倒し、黒のキングへと駆け出した。
いつもなら足の裏に反射を発動し、体をとてつもない速度で動かして攻撃しているのだが、今回はそれを使わず、あえて身体能力のみで黒のキングへと向かっていく。
(その理由は……これだ!!)
俺は前々から手の中に握り込んでいた石を1つ、黒のキングに向けて発射する。そこには反射の力がこもっており、普通に投げた石よりも遥かに弾速は速い。黒のキングのような弱々しい体なら、これに当たるだけで致命傷になるだろう。
「またその石か? 僕には効かないとわかっているはずだぞ!!」
しかし、この石は何日か前に実行して見せてしまっていて、その時は石の弾道を完璧に把握され、手の甲でいなされてしまった。
だが、この俺がわざわざ手の内がバレてしまっているタネをもう一度使うわけがない。もちろん、ここに一手間加えるのだ。
(ここで……反射を使う!!)
俺は手のひらを石の弾道に被せた瞬間、反射を発動した。
当然だが、俺は石に反射を発動したい。しかし、反射は発動した部位に触れているものにしか効力を発動しない。
石は弾道のその先にあるため、無論、反射の射程圏内から完全に外れてしまっている。このままでは石に力を伝えるどころか、せっかく手のひらに溜めた反射がどこにも影響を及ぼさずに終わってしまう。
だが、しかし、しかしだ。
この場で、たった1つだけら今なお運動エネルギーによって前に進んでいる石に、更なる力を与えることができる一手があるのだ。
それが……
(これだ!)
「"空気反射"!!」
その言葉と同時に、手のひらから感じる衝撃とともに、手のひらサイズの空気弾が発射される。
黒剣と同じく、大阪派閥でお披露目してから使い道が全くなかった空気反射がついに火を吹く時だ。
これを今まで使わなかった理由は、単純に石を反射でぶん投げた方が速いから。ただこの一言に尽きる。
ただ、今この状況に限っては話が別だ。俺の読み通りなら、自分自身から数メートル先にあるものに対して力を与えたいという限定的なこの場面でのみ、この空気反射が最高かつベストな働きをしてくれるのだ。
案の定、空気弾は石よりも重さが少ないため、全く同じ運動エネルギーを与えられた場合、石よりも速く移動してくれている。
そして空気弾は俺が思っていた以上の速度で石に追いつき、石と接触すると、接触された石がもう一段階加速した。
空気弾が石にぶつかり、その衝撃によって弾けた空気弾の勢いで、石がさらに加速したのだ。
「む!?」
加速した石を見た黒のキングは、いつものしかめっ面を少しだけ歪ませる。どうやらさすがの黒のキングも、この現象は予想していなかったらしい。
だがこの程度の事態で動揺しているような人間が、何十年も黒のキングの地位に就いているわけがない。黒のキングは咄嗟にいつもの気配のない瞬間移動を発動し、速度が増した石を瞬時に回避する。
が。
(それの対処法は思いついてるんだよ!! ……試したことないけどな!!)
俺はその場で右腕を掲げ握り拳を作り、反射に闘力、エリアマインドと、自分の持てるスキルの全てを右拳に結集させ……
「むぅん!!!!」
自分の真下にある地面に向けて、拳を叩き込んだ。