表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
457/783

透明人間

 犯人を判明させるため、監視カメラに映った録画を閲覧することができる監視ルームに赴いた私だったが、そんな願いは無残にも、完全に真逆の形で裏切られることになってしまった。


「こ、これは……!?」


 隣にいる警察官が、誰かに答えを求めるように声を発する。


 それも仕方がないことだろう。監視カメラに映っていた映像は、我々の想像を遥かに超えるものだったのだから。


「どうにもこうにも……透明人間がやったとしか……」


 監視カメラに映っていたのは、海星大河を殺害し、証拠となる物体が1人でにふわふわと浮き、自分からその姿を粉にしていく光景だった。


「し、しかし黒のクイーン。これは透明人間ではなく、外から遠隔で物体を動かすスキルを持つ者による犯行では……?」


 私がつぶやいたその言葉に、警察官は私に対して質問を投げかける。


 確かに、殺した後の後始末だけを見れば、その可能性もなくはないだろう。


 しかし、そうなると私には1つ、大きな引っかかりがあった。


「……これを逆再生できる?」


「はい。問題ありませんよ」


 私は監視ルームの職員に、録画の逆再生をお願いする。すると、画面に映っていた録画はすぐさま逆再生を初め、よくある不思議映像のように、粉になっていたはずの注射器が形を取り戻していく。


 逆再生を始めてから数十秒のところで、私は監視ルームの職員に待ったをかけた。


「待って。そこでストップ」


 その声を聞いて、監視ルームの職員は録画をとある場面で一時停止する。


「あなた、ついさっき、これは透明人間ではなく、遠隔で物体を動かすスキルじゃないかと言ったわね?」


 私の言葉に対し、警察官はコクリと頷く。


「これが……遠隔で物体を動かすスキルだとは思えない証拠よ」


 一時停止された画面には、海星大河が目を覚まし、頭だけ横を向けて口をパクリと開けているところが映されていた。


「これは……」


「そしてここを……再生してちょうだい」


 そこから通常の再生が行われ、海星大河の体がしばらくの間1点を向いて、口をパクパクと動かしている様子が映し出された。


「な、なんだ……? そんなに口を動かして……まるで……」


「まるで……誰かと話しているかのようねぇ?」


 警察官が次に話す言葉を予想し、それを先読みして口に出すと、警察官は画面を見つめたまま、ハッと、何かに気づいたような表情を見せた。


(気づいたようね……)


 そう。もし物体が1人でに動いているのなら、まだ物体が動いていない状態でこんな不可解な行動は取らない。


 さらに、海星大河の視線は常に一点に向いていて、まるで誰かと話しているかのようだ。海星大河は性格上、こんな無駄な行動を取らない。それは同期である私が1番よく知っている。


(となると……海星にだけは、犯人の姿が見えていたと言うことになる……!!)


 その事実に、私は思わず頭を抱えてしまう。



 何せ、今現在の神奈川本部には、透明な殺人犯と、黒ジャケットの疑いがある田中伸太。この2人と言う爆弾を抱えているとわかってしまったから。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ