プレゼントdeath
ででーんででん!
俺は海星大河の作り上げた水の竜巻と、何百倍もでかくなった水の蛭に直面していた。
「…………」
(蛭や竜巻は問題じゃない……が、殺すときに悲鳴をあげられては困る)
海星大河は俺が作り上げた作戦通り、ここで死ななくてはならない存在なのだ。
海星大河はあの試合で唯一、今の袖女の戦い方をその肌身で体感した人物だ。
もし、海星大河がこの試合で得た体験を周りにばらすようなことがあれば、袖女の勝率がぐっと下がってしまう。
袖女との約束を守るため、袖女の俺への信頼度を確固たるものにし、これからも神奈川派閥のスパイとして活動させるために、なんとしても1週間後のプロモーション戦は勝たせてやらなくてはならないのだ。
(……って言うのは建前で……)
実のところ、この行為は俺の自己満足に近い。今の今まで、チェス隊どもが邪魔をしなければスムーズに進んでいたことをことごとく邪魔をされ、そのたびに俺は奔走する羽目になっていたのだから。
これはやり返しだ。同盟会議の時は言わずもがな、大阪派閥にいる時すら、まるでこちらの動きが予知されているかのように袖女を差し向けてきた。
そして神奈川派閥に来てからは、案の定黒のクイーンに邪魔をされ、神奈川派閥での生活が脅かされてしまった。
だからこれはただの自己満足なのだ。今まで散々俺が邪魔をしてきたことに対してのやり返し。
(命を1つ散らしたら……黒のクイーンも怖がってくれるかな?)
俺はそう思いつつ、医務室内にあるタンスの中にある注射器を4つほど片手で鷲掴みし、反射とエリアマインドを使って竜巻の中へぶち込んだ。
4つも注射器をぶち込めば、どれか1つ位は海星大河の体に突き刺さってくれるだろう。
一応、さっきまで海星大河の首があった場所を狙って注射器を投げたため、もしあそこから体が移動していなければ、これだけであの世へレッツゴーしてしまうだろう。
「んで、こいつらは……」
(反射)
飛びかかってくる蛭に向かって手をかざし、反射を宿す。そのまま完璧に蛭をはたき落とし、反射の力で一瞬にして消滅させた。叩き落とすまでの時間、実に2秒。
そのままその手で竜巻に触れ、反射で竜巻を消滅させると……
「……ふぅ、終わったか」
首に穴を開け、ベッドのシーツに血を滲ませたまま、海星大河は事切れていた。