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死という体験

 昼! 皆さんご飯を食べて元気にいきましょう。

(先生……! 来てくれたんだ!)


 医務室に出入りする人物など、お見舞いに来てくれた人物か医務室の先生以外ありえない。


 しかし、私を乗せるベッドの周りにはカーテンがかかっており、医務室のドアを開閉した人物の正体までは確認できない。


 そんな状態で医務室の先生だと思って声を出して、もし間違っていたら恥ずかしいったらありゃしない。


 ここは一旦入ってきた人物は誰かと聞いておくのが良いだろう。


「誰ですかー?」


「…………」


(反応がない……?)


 医務室に入ってきた誰かに対して声をかけるが、返答がいつまでたっても来ない。相手にこの問いかけを無視する理由はないと思うが……


(そもそも、ドアの開閉音も私も勘違いだったのかも……いやそれはないな)


 一瞬、そもそもの開閉音が私の空耳かと考えたが、それはないと私の脳内が判断した。


 ドアの音は日常的に聞く音の中でも特徴的だ。しかも、神奈川本部の壁は全てに防音対策が施されている。廊下にも、チェス隊メンバーに用意された自室にも、もちろんこの医務室にもだ。よって、廊下にある他のドアの音がたまたま聞こえたとは考えづらい。


 よって、さっきのドアの開閉音は間違いなく1部室のドアのものだ。それは絶対に間違いは無い。


 では、医務室に入ってきた人物が私の問いに答えない理由とは……


 再び思考の海に潜り込もうとしたその時、私の寝転んでいるベッドを囲んでいたカーテンが、一気に開かれ、そこにいる人物の姿があらわになった。


「……っ!」


 そして、その姿を私の眼球に写した瞬間、脳内は先ほどまでの思考モードから一転、耳からサイレンが鳴り響くんじゃないかと思うほどの警戒警報を鳴り響かせる。



 なぜなら……



「……ほう? すでに意識を取り戻していたか」



 その姿は、神奈川本部で見たことのないものだったから。



 体躯は通常よりも大きい。180センチはあるだろうか? 肩幅もがっしりとしている。衣服は黒いジャケットを着こなしていて、ここまでなら普通の男性に見えなくもないが、フードを目元まで深く被り、顔を見えなくしてあるおかげで完全に不審者にしか見えなくなっていた。


「……どなたですか?」


「わからないか?」


 目の前の不審者の言葉に、必死に記憶の中を探るが、彼のような黒いジャケットを着た人物はその中にはいない。つまり、完全な初対面と言うことだ。



 ……しかし、なぜだろう。彼を見ていると……



(なんだか……喉が突っかかる感じ……)



 不思議な違和感を感じたが、不審者がそれに気づくわけもなく、こちらの都合など知ったこっちゃないという感じで、淡々と言葉を発していく。


「……まぁ、わからないならいいんだ。スキルがちゃんと聞いている証拠だしな。それより……俺が来たのは、1つ、お前に人生に二度とない体験を味わわせてやろうと思ってきたんだ」


「二度とない体験?」


 その時、不審者は唯一見えている口元を大きく歪め……


「ああ……死……ってやつだよ」


 それがさも当たり前かのように、ゆっくりとつぶやいた。





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