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終盤 その6

 最初から伸太視点です〜次も伸太視点になります〜

 時は少し前に遡り、海星大河が『大海神ポセイドン』を使った直後のこと。


 観客席は、まだ見ぬ水の化身に大きな歓声をぶつけていた。


「うおおおおおおおお!!!!」


「なんだあれええええええええ!!!!????」


「きゃああああああああ!!!!」


 袖女が大立回りを見せた時以上の大歓声。この時に耳をつんざくように聞こえたこの声が、この世界この時間で一番の大音量だったことは言うまでもないだろう。


 しかし、肝心のチェス隊メンバーは周りの有象無象のように狂ったような奇声を上げず、じっくりと舐め回すように、かつ真剣な目つきで『大海神ポセイドン』を見つめていた。


「……? みんなどうかしたのか?」


「いや……あれは実戦レベルの代物だなって……」


 俺の真横に位置取る旋木が、チェス隊メンバーを代表してぼそりと言葉をこぼす。


(……? だから何だ?)


 しかし、その言葉だけでは納得がいかず、俺はさらなる質問をぶつける。


「実戦レベルの代物だから何なんだ?」


「はぁ……」


 俺のその問いかけに、俺から旋木を跨いだ奥に陣取っている王馬が呆れた様子でため息をついた。


「あなた……それでも本当に兵士なんですの? これから競い合う相手になるかもしれないライバルの新技なのですのよ? 自分ならどう突破するか、攻略できるかどうかを想定するのは当然のことでしょう。ま、私なら2秒で突破できそうですけども……」


(無視無視……)


 これ以上王馬に喋らせるとただの自慢話になりそうだったので、早々に王馬から顔を背け、代わりに反対方向にいる如月に質問することにした。


「なぁなぁ、結局今ってどういう時間なの?」


 その質問に対して如月は無表情を崩さず、こちらに目線を向けて淡々と答えてくれた。


「……おおむねのことは王馬が言った通り……自分があれと戦って、勝てるのかどうか……それをみんな考えてる……私は考えてないけど……」


「え? 考えてたわけじゃないのか? 無口だったし」


「私は……もともと無口……」


「それは失礼」


 つまり、周りの有象無象たちは、海星大河の呼び出した『大海神ポセイドン』に興奮しているだけだが、チェス隊メンバーは興奮する前に、あの新技に対してどうするか、それを考えているわけだ。


(……あれに対して勝てるかどうか?)


 正直、あの技を見て勝てるか勝てないかを考えるなど、俺には考えても見なかった。


(勝てるのは"当然"……魅せプしても勝てそうだけど……)


 今までの戦いを見ていると、袖女にたやすく水で作り出した物体が破壊されているのが見て取れたため、水で作り出したものの耐久力は低いことがわかる。それなら反射で体を加速させ、何度も連打すればいともたやすく攻略できることだろう。


(ま、いいか。人の価値観なんて人それぞれだし)


 俺は気持ちを入れ直し、改めて訓練所の中で行われている試合に目を向けた。


 

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